2012年06月03日
伝説のワルター・ウィーン告別演奏会
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1960年5月29日、ウィーン、ムジークフェラインザールでのライヴ録音。
マーラー生誕百年記念の1960年、ウィーンでも祝賀コンサートが予定され、その目玉として、ブルーノ・ワルターを招くことが計画された。
当時80代半ばに達していたワルターは、1957年に心臓発作を起こしたこともあって、表舞台からは限りなく引退に近い状態にあり、もっぱらコロンビア交響楽団とのレコーディング活動に専念していたのであるが、この特別公演はほかならぬ恩師の記念演奏会ということもあってか、ワルターにも気力がみなぎり、感動的な演奏を聴かせてくれることとなったのである。
結果としてワルターのウィーンでの最後の演奏会となったこの公演であるが、曲目といい、演奏内容といい、ワルター好きなら絶対おさえておきたい意義深いものであることは確かである。
幸い、この種のライヴ録音としては、モノラルながら音の状態もまずまずであり、細部まできちんと聴けるのがなによりの朗報。
当時のワルターは、一連のコロンビア響とのレコーディングにもあらわれているように音楽のスケールの大きさや厳しい造形美を追及していた時期にあたり、ここでの演奏にもそうした傾向が窺われているのが非常に興味深いところ。
たとえば名高いマーラーの第4番では、クレンペラーも真っ青の堂々たる造形美を示しながらも、情感表現では実演のワルターならではの濃やかを示し、その相乗効果がとんでもない深みをみせてくれているのである。
特に第3楽章アダージョは絶品であり、『フィデリオ』第1幕四重唱のパロディ(クレンペラー盤で聴くとよくわかる)とも思われる第1主題部での天国的な静謐(もとネタは世俗丸出し。ちなみにワルターの『フィデリオ』は強烈だった)や、中間部での過ぎ去った人生への賛歌とでもいいたくなるその思索的な美しさと雰囲気には実に素晴らしいものがある。
第4楽章では、クレンペラー盤と同じくシュヴァルツコップが独唱を担当し、通常とは大きく異なる境地に達した感動的な歌唱を聴かせてくれている。
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