2012年06月07日
ワルターのベートーヴェン:ミサ・ソレムニス
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1948年4月18日 ニューヨークでのライヴ録音。
それにしても凄まじいベートーヴェンだ。ワルターの最高傑作の1つと評しても過言ではない。
第1曲の「キリエ」からワルターの気迫と情熱は際立っており、ひびきも実に立派だ。
中間部のテンポがかなり遅く、スケールの大きさと風格を感じさせるのが独特である。
つづく「グローリア」はたいへんなスピードだが、決して上滑りせず、特に最後のプレストの手に汗を握るような速さと、その直前のアッチェレランドはまさに最高。
録音の分離が悪く、細部を聴きとれないのがかえすがえすも惜しまれるが、決めどころにおけるティンパニのとどろきと金管の最強奏が絶妙なアクセントとなり、テンポも曲想の移りや言葉の意味にしたがって微妙に変化してゆく。
クレンペラーに比して、少なくとも筆者にとっては理想の「グローリア」だが、前記の特徴は、ワルターの《ミサ・ソレムニス》全体にいえることであり、わけてもオーケストラの雄弁さはその比を見ない。
「クレド」は一転して遅いテンポで開始される。
構えが大きく、まことに壮麗だが、音楽の局面に応じて無限に変化する。
たとえばキリストの受難の場面で、オーケストラの音を1つ1つはっきり切って、異常な苦しみを表出したり、特に復活の後"天に昇りて御父の右に座し"のコーラスの途中に現われる最後の審判のトロンボーンで、大きくテンポを落としつつ強奏させるなど、ワルターならではといえよう。
つぎの「サンクトゥス」では、"オザンナ"のフーガをクレンペラー同様ソロの四重奏にしているが、ここはコーラスの方が良いと思う。
最後の「アニュス・デイ」はワルターらしく良く歌った名演で、聴いていて音楽のみを感じさせ、なんの抵抗もない。
後半の"ドナ・ノービス"の部分は速めだが、終結はちょっとあっさりしすぎるようだ。
ベートーヴェンの書き方は確かにこの通りだし、その方がミサの儀式の途中なので正しいのかも知れないが、コンサート形式による大曲の結びとしては物足りなさが残る。
ワルターの《ミサ・ソレムニス》で気になったことといえば、この終わり方だけであった。
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