2015年01月06日
インバル&チェコ・フィルのマーラー:交響曲第7番「夜の歌」
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インバルは現代最高のマーラー指揮者の一人と言える。
インバルの名声を一躍高めることになったのは、フランクフルト放送交響楽団とともにスタジオ録音したマーラーの交響曲全集(1985年〜1988年)であるが、その後も東京都交響楽団やチェコ・フィルなどとともに、マーラーの様々な交響曲の再録音に取り組んでいる。
本盤に収められたチェコ・フィルとのマーラーの交響曲第7番の演奏も、そうした一連の再録音の一つであり、インバルとしては、前述の全集中に含まれた演奏(1986年)以来、約25年ぶりのものである。
当該全集の中で、最も優れた演奏は同曲であった(全集の中で唯一のレコード・アカデミー賞受賞盤)ことから、25年の歳月が経ったとは言え、当該演奏以上の名演を成し遂げることが可能かどうか若干の不安があったところであるが、本盤の演奏を聴いて、そのような不安は一瞬にして吹き飛んでしまった。
実に素晴らしい名演であり、正に、近年のインバルの充実ぶりが伺える圧倒的な超名演と言っても過言ではあるまい。
かつてのインバルによるマーラーへの交響曲演奏の際のアプローチは、マーラーへの人一倍の深い愛着に去来する内なるパッションを抑制して、可能な限り踏み外しがないように精緻な演奏を心掛けていたように思われる。
全集の中でも特に優れた名演である第7番についても例外ではなく、全体の造型は堅固ではあり、内容も濃密で立派な名演奏ではあるが、今一つの踏み外しというか、胸襟を開いた思い切った表現が欲しいと思われることも否めない事実である。
ところが、本演奏においては、かつての自己抑制的なインバルはどこにも存在していない。
インバルは、内なるパッションをすべて曝け出し、どこをとっても気迫と情熱、そして心を込め抜いた濃密な表現を施しているのが素晴らしい。
それでいて、インバルならではの造型の構築力は相変わらずであり、どんなに劇的かつロマンティックな表現を行っても、全体の造型がいささかも弛緩することがないのは、さすがの至芸と言うべきであろう。
いずれにしても、テンポの効果的な振幅を大胆に駆使した本演奏のような密度の濃い表現を行うようになったインバルによる超名演を聴いていると、バーンスタインやテンシュテット、ベルティーニなどの累代のマーラー指揮者が鬼籍に入った今日においては、インバルこそは、現代における最高のマーラー指揮者であるとの確信を抱かずにはいられないところだ。
オーケストラにチェコ・フィルを起用したのも功を奏しており、金管楽器、特にトランペットやホルンなどのブラスセクションの卓抜した技量は、本超名演のグレードをさらに上げる結果となっていることを忘れてはならない。
そして、SACDによる極上の高音質録音も、本超名演を鮮明な音質で味わえるものとして大いに歓迎したい。
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