2012年06月29日

シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデンのシューマン:交響曲全集


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本盤には、2001年に惜しくも急逝したシノーポリが遺した唯一のシューマンの交響曲全集が収められている。

精神医学者でもあり、作曲家でもあったシノーポリの演奏は、楽曲の細部に至るまで彫琢の限りを尽くした明晰さを特徴としている。

このような分析的なアプローチに符号した楽曲としては、例えばマーラーの交響曲などが該当するところであり、シノーポリも比類のない名演を成し遂げることに成功した。

したがって、精神分裂的な気質がマーラーに酷似しているシューマンの交響曲においても、シノーポリが名演を成し遂げたというのは、ある意味では当然のことであったと言えるだろう。

シューマンは長年に渡って精神病を患っていたが、シューマンの各交響曲における各旋律の随所に込められている心の慟哭や絶望感を徹底的に追及するとともに抉り出し、持ち味の分析的なアプローチによって完全に音化することを試みており、他のいかなる指揮者による演奏よりも彫りの深さが際立っている。

他方、シノーポリのイタリア人指揮者としての資質に起因すると思われるが、交響曲第1番や第3番(第4楽章を除く)などに顕著な明朗な旋律の数々も豊かな歌謡性を持って歌い抜いており、細部に至るまで彫琢の限りを尽くした表現を行いつつ、音楽の流れもいささかも淀みがなく流麗に流れていくという、ある意味では二律背反する要素を巧みに両立させた見事な名演奏を繰り広げていると言っても過言ではあるまい。

そして、シュターツカペレ・ドレスデンのいぶし銀の重心の低い音色が、演奏全体に独特の潤いと奥行きの深さを付加するのに大きく貢献しているのを忘れてはならない。

併録の「序曲、スケルツォとフィナーレ」は、オペラを得意としたシノーポリならではの聴かせどころのツボを心得た語り口の巧さが光った名演と評価したい。

音質は、1990年代のスタジオ録音であり、これまで特段の高音質化は図られていないが、従来CD盤でも十分に満足できる良好なものである。

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classicalmusic at 20:54コメント(2)シューマン | シノーポリ 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2022年02月28日 09:15
4 早世したシノーポリの貴重な録音。交響曲の分野ではブルックナーやマーラーに肩を並べる重要な全集でしょう。いぶし銀のドレスデンサウンドはベルリンの壁崩壊後も暫く保持されたためか,この全集でもその魅力を十分味わう事が出来ます。さらに4Dの録音は優秀で聴きごたえが有ります。シノーポリは2番を以前ウィーンフィルと録音しており,それは当時破格の名演でした。今回はその演奏に引けを取らない行き届いた秀演と言えるでしょう。1番の出だしや4番がやや物足りない気はするが,テンポが自然で良く纏まった全集と評価したい。ところで,同じシュターツカペレドレスデンとのルカ教会での全曲録音となると,どうしても本盤の20年前に録音されたサヴァリッシュ盤と比べざるをえない。勿論サヴァリッシュ盤の録音はシノーポリ盤のそれには及ばず,テンポの速さも若干気になるが,シュターツカペレドレスデンの魅力を最大限に引き出した最高の全集と評価出来るでしょう。
2. Posted by 和田   2022年02月28日 10:19
サヴァリッシュ盤は、録音の物理的な条件にもう少しクリアーさを求めたい部分がありますが、全体としては最もバランスの良い名演と言えます。いわゆる原典版による全集ですが、全体にいかにもシュターツカペレ・ドレスデンらしい、渋くて重厚なシューマン演奏になっています。このオケ特有の木の温もりにも譬えられる響きの特質を生かした爽やかさと自然な流れがあり素晴らしいです。細かなことですが、ティンパニの皮が決してビニールではなく、本物の皮革だというのが、聴いているとたちどころに分かります。その音の響きの深いこと、全体の構成の見事なこと、サヴァリッシュの数ある録音の中で、1、2を争う名盤であり、特にシュターツカペレ・ドレスデンの魅力を天下に知らしめる恰好の交響曲全集といえるでしょう。知的造形感とパッションが一体となったときのサヴァリッシュには、ほとほと感服させられますし、オーケストラの底力にも恐れ入った次第です。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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