2012年07月03日
パッパーノのマーラー:交響曲第6番「悲劇的」
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驚くべき超名演の登場である。
これから壮年期を迎えようとしている今をときめくイタリアの俊英指揮者であるパッパーノがついにマーラーの交響曲の録音に着手した。
イタリア人指揮者によるマーラーの演奏については、アバド、シャイー、シノーポリなどが個性的な素晴らしい名演の数々を成し遂げており、パッパーノがどのようなアプローチで演奏に臨むのかは実に興味深い。
そして、最初の録音に、いきなり中期の傑作である交響曲第6番を選んだという点に、パッパーノの並々ならぬ自信と意気込みを感じることが可能である。
本演奏は、そうした我々聴き手の期待をいささかも裏切ることがない、そしてパッパーノの自信を大いに感じさせる堂々たる名演に仕上がっている。
それどころか、名演の前に超をいくつか加えてもいいのかもしれない。
筆者も本演奏を聴いてそれくらい深く感動した。
そして、音質が極めて鮮明であり、各楽器セクションが見事に分離して聴こえるのも、本超名演に一躍買っている。
パッパーノの基本的なアプローチは、特別な解釈を施して聴き手を驚かせようというような奇を衒ったところがいささかもなく、曲想を精緻に描き出していくという、近年主流となりつつあるマーラー演奏の王道を行くものである。
テンポはゆったりとした悠揚迫らぬものであるが、効果的なテンポの振幅を交えつつ、俊英指揮者パッパーノならではの片鱗を感じさせるような強靭な生命力と張り詰めるような気迫が全体を支配しており、特に、第1楽章のトゥッティに向けて畳み掛けていくような力強さは、我々聴き手の度肝を抜くのに十分な迫力を誇っている。
それでいて、各旋律を徹底して歌い抜いているのが感動的であり、これはイタリア人指揮者ならではの真骨頂とも言えるだろう。
また、近年の同曲の演奏では、マーラーの意向に従って、従来版の第2楽章スケルツォと第3楽章アンダンテの順序を入れ替えて演奏するのが主流となりつつあるが、パッパーノは敢えて従来版に従って、第2楽章スケルツォ、第3楽章アンダンテとして演奏しており、従来版を支持する筆者としてもこれは大いに歓迎したい。
そして、第2楽章の重厚にして強靭な力感は圧倒的な迫力を誇っており、その彫りの深い表現には凄みさえ感じられる。
第3楽章の各旋律の心を込めた歌い方は美しさの極みであり、その汲めども尽きぬ豊かな情感は抗し難い魅力に満ち溢れている。
終楽章も恐るべき迫力で、音質の良さも多分にあると思うが、各楽器セクションをパワフルに鳴らしつつ、いささかも雑然とした演奏には陥っておらず、加えて、同楽章のドラマティックな要素を完璧に音化した手腕は殆ど驚異的である。
かかるパッパーノによる驚異的な統率の下、最高のパフォーマンスを発揮したローマ聖チェチーリア国立アカデミー管弦楽団にも大きな拍手を送りたい。
特に、ブラスセクションの巧さは特筆すべきであり、あらためて同オーケストラのレベルの高さを思い知った次第だ。
いずれにしても、本演奏は、パッパーノの驚くべき才能と同時に前途洋々たる将来性を大いに感じさせるとともに、ローマ聖チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の卓越した技量を窺い知ることが可能な圧倒的な超名演である。
今後のこのコンビによるマーラーの交響曲チクルスの続編にも大いに期待したい。
そして、音質は驚くべき鮮明さで、重厚さにも不足はなく、これはHQCD化もある程度効果を発揮しているのではないかと考えられる。
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