2012年07月04日
アバド&ベルリン・フィルのマーラー:交響曲第4番
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本盤に収められたマーラーの交響曲第4番は、アバドによる2度目の録音である。
最初の録音はウィーン・フィルとの演奏(1977年)であったが、本演奏はそれから約30年ぶりのライヴ録音ということになる。
1977年盤も、アバドがある意味では最も輝いていた時期の演奏でもあり、強靱な気迫と力強い生命力、そして豊かな歌謡性がマッチングした、いい意味での剛柔バランスのとれた名演に仕上がっていた。
1970年代から1980年代にかけてのアバドの演奏には、このような名演が数多く成し遂げられていたが、1990年にベルリン・フィルの芸術監督に就任して以降は、借りてきた猫のような大人しい演奏に終始するようになってしまった。
もちろん、メンデルスゾーンの交響曲第4番やヤナーチェクの「シンフォニエッタ」など、例外的な名演もいくつか存在しているが、その殆どは大物揃いのベルリン・フィルに気後れしたかのような今一つ覇気のない演奏が多かったと言わざるを得ない。
ところが、ベルリン・フィルの芸術監督の任が重すぎたせいか、2000年には癌に倒れることになってしまった。
そして、アバドはその癌を克服するのであるが、それは皮肉にもベルリン・フィルの芸術監督の退任直前。
もっとも、大病を克服したことによってアバドの音楽には、深みと凄みを増すことになった。
その意味では、2000年以降のアバドは真の大指揮者となったと言っても過言ではあるまい。
本盤の演奏も、真の大指揮者アバドによるものであり、1977年盤に比べると楽曲の心眼に鋭く切り込んでいこうという彫りの深い表現が支配している。
各楽器セクションのバランスを重要視した精緻な美しさにも出色のものがあるが、ここぞという時の力奏にも強靭な迫力が漲っており、各フレーズの歌心溢れる徹底した歌い抜きにおいてもいささかも不足はない。
ルネ・フレミングによる美しさの極みとも言うべき名唱も、本名演に華を添える結果になっていることを忘れてはならない。
ベルリン・フィルも、前任の芸術監督に敬意を表して、圧倒的な名演奏を披露しているのも見事である。
本演奏に際しては、ベルリンにおいて大歓迎を受けたとのことであるが、正に現代を代表する大指揮者としての貫録が十分な名演と評価したい。
併録のアルバン・ベルクの「7つの初期の歌」も、アバドの彫りの深い、そして歌謡性豊かな指揮と、ルネ・フレミングによる美しい歌唱が融合した稀有の名演だ。
音質は、本従来CD盤でも十分に満足できる高音質であるが、先日発売されたSHM−CD盤は、若干ではあるが音質がより鮮明になるとともに、音場が幅広くなったように思われる。
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