2012年07月14日
ラトル&ベルリン・フィルのブラームス:交響曲全集
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ベルリン・フィルは、フルトヴェングラーやカラヤンの時代にあった重心の低い重厚な音色がアバド時代に影をひそめ、明るく軽い音色に変質しつつあった。
そのようなベルリン・フィルを受け継いだラトルも、当初は、独自色を出そうにも空回りすることが多く、軽妙浮薄なベルリン・フィルの音色と相まって浅薄な凡演が目立っていた。
シューベルトの「第9」、ブルックナーの「第4」、R・シュトラウスの「英雄の生涯」など凡打の数々…。
しかし、2007年のマーラーの「第9」あたりから、ベルリン・フィルの重厚な音色が復活し、ラトルも小賢しい技巧に走るのではなく、堂々たる正統派の演奏を行うようになった。
今般のブラームスの交響曲全集も、そうしたラトルの新しい演奏スタイルに沿った演奏であり、一言で言えば、ベルリン・フィルの重厚かつ重量感溢れる演奏をベースにした、ドイツ音楽の伝統に根ざした堂々たる正統派の名演ということになろう。
もちろん、各楽章の描き分けも見事で、ブラームスならではの枯れた抒情の描出にも抜かりはない。
「第4」の第2楽章のように、いささか表現過多な箇所も見られるが、ラトルはまだ50代、前途洋洋たる更なる将来性に期待したい。
それにしてもツィマーマンとの「ピアノ協奏曲第1番」でも垣間見えたが、ラトルとベルリン・フィルのコンビは本当にブラームスと相性が良い。
奇矯な解釈ではないが、イン・テンポ気味の縦型演奏が多いブラームスへの見方に一石を投じる様なテンポ変動を以て、ブラームスの本来重々しかった交響曲に躍動感、生命力を与えている。
それでいて縦の線も一切崩れないのはラトル、ベルリン・フィルも手腕もさながら、やはり相思相愛であるからか、と感じさせてくれるほどオケが献身的である。
20世紀の巨匠たちの時代の名演とは完全に一線を画す演奏で、21世紀のマイルストーンとも言うべき全集だと思う。
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