2012年08月04日
ジンマンのマーラー:交響曲第7番「夜の歌」
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ジンマンのマーラーはこれが初聴になるが、今までこのチクルスに関心を持たず、全く手を出していなかったことが残念になるくらい素晴らしい演奏だと思う。
ジンマンはやはり凄い。
マーラーの「第7」をさらっと何でも無いように始めて、テンポを揺らすべきツボを心得ていると言うか、気が付けばジンマンのマーラーに引き込まれている。
「第7」は難解な曲だが、そこをわかりやすく耳に馴染ませてするりと聴かせてくれるジンマンの手腕に恐れ入った。
何より魅力なのが、テンポ配分や雰囲気作りの巧さで、「棘々しくもあるマーラーの魅力」が損なわれないまま、身体に、耳に、脳に、心地よく入ってくるのだ。
第1楽章は普通の出来。
これは平凡という意味ではなく、ジンマンの個性が出ていないという意味。
それが第2楽章以下では、漸くジンマンの個性が表れてくる。
緩急を際立たせたテンポ設定の妙、対旋律の驚くような活かし方、うなるような重低音、天国的な美音、そして木管や金管の不思議な音色、カウベルをはじめとする打楽器の響きの面白さ。
これらを、SACDマルチチャンネルによる明晰な録音により、我々聴き手にダイレクトに描出してくれる。
そして派手ではないが、次第に高揚していくフィナーレはとてもすばらしい。
いつも通りのジンマンであるが、「中庸のよさ」を発揮した1枚だ。
好き嫌いが生ずる演奏であるとは思うが、名演との評価を下すのには些かも躊躇しない。
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コメント一覧
2. Posted by 小島晶二 2022年04月12日 09:54
ジンマンは才人。彼のベートーヴェンの第9等は古楽器スタイルながら実に雄弁でした。本演奏も同じくチューリヒトーンハレ管なので,本曲も古楽器スタイルですね。しかしマーラー7番を古楽器スタイルで演奏する等私には想像すら出来ません。ジンマンは同オーケストラとマーラーの交響曲全集を録音しており,1,4,5,6,9番辺りは現代的な演奏として日本でも大変評判が良い様です。中でも7番がお薦めでしょうか。
3. Posted by 和田 2022年04月12日 09:55
ジンマンのマーラーへのアプローチは、曲想を精緻に、そして丁寧に描き出していくというものであり、ある意味ではオーソドックスなものと言えるでしょう。もっとも、ジンマンの場合は、各楽器の鳴らし方に特徴的なものがあり、透明感溢れるクリアさが全体を支配しているとさえ言えます。これは、ジンマンが成し遂げた古楽器奏法によるベートーヴェンの交響曲全集にも通底するものと言えるところであり、マーラーによる複雑なオーケストレーションをこれほどまでに丁寧かつ明瞭に解きほぐした演奏は、レントゲンで写真を撮るかの如き精密さを誇るかのブーレーズの精緻な演奏にも比肩し得るものであるとも考えられます。それでいて、演奏が冷徹なものになることはいささかもなく、どこをとっても豊かな情感に満ち溢れているのがジンマンのマーラーの素晴らしいところであり、これはジンマンの優れた音楽性の賜物と言っても過言ではありますまい。ジンマンの統率の下、トーンハレ管弦楽団も持ち前の卓越した技量を発揮して最高のパフォーマンスを発揮している点も、本名演に大きく貢献しているのを忘れてはならなりません。特にどのナンバーが優れているとかいうのではなく、総じて凹凸のない素晴らしい出来ばえだと思います。