2012年09月24日

『証言・フルトヴェングラーかカラヤンか』 (新潮選書)を読んで


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タイトルが、故ヴェルナー・テーリヒェン著『フルトヴェングラーかカラヤンか』(音楽之友社)を念頭に置いているのは明らかだが、インタビュアーである著者の答えは予め出ていて、テーリヒェンを始めとするベルリン・フィル元団員たちの証言を楯にしてずらりと並べ、その陰から矛を繰り出そうという意図だったのだろう。

しかし、元団員たちもただ者ではない。

多くは「その手には乗らない」応答に終始したように読める。

色々興味深い証言はあるのだが・・・・。

それにしても、世の中、本書に限らず、「白か黒か」、「正義か悪か」式の割り切り方に無理矢理持って行こうという傾向が強くて辟易する。

テーリヒェンはすっかりアンチ・カラヤン派のヒーローにされてしまった。

しかし、先年、NHKが、保有する往年の名演奏家たちによるライヴ映像を最新技術で蘇らせたが、ある番組の中に、1957年のベルリン・フィル初来日公演の模様を元団員たちが視聴するシーンがあった。

その中で、かつての自分たちの演奏を、指揮(勿論カラヤン)も含めて一番熱っぽく賞賛し懐かしがっていたのがテーリヒェンその人であった。

上記著書を読んでいただけに少々驚いたが、一方でなるほどと納得もできるのである。

長く続いた人間関係には、単純に仲が良かった悪かったでは済まされない、愛憎が複雑に絡み合った事情があるもの。

うまくいっている時は「あばたもえくぼ」だったのが、一つ歯車が狂い出すとすべてがネガティブになり「えくぼがあばた」になることも珍しくない。

互いに年をとり、柔軟性がなくなって頑なになり、寛容さも忍耐強さも失われてくれば尚更である。

テーリヒェンの著述や発言はそのことを踏まえて受け取る必要があるのではないか。

また、著者とテーリヒェンが崇敬してやまないフルトヴェングラーにしても、ベルリン・フィルとの関係は常に蜜月状態、運命共同体であったわけではなかったことは、ミーシャ・アスター著『第三帝国のオーケストラ』(早川書房)等、近年出版されたいくつかの書物につぶさに記されている。

特に第2次世界大戦後は、1947年5月の有名な復帰コンサートにおける興奮と感動があったにしても、両者の関係はかなり微妙で考え方の乖離も小さくなかった様子。

この点、日本のフルトヴェングラー・ファン諸氏の認識とはかなり相違しているのではないか。

テーリヒェンの著述や発言が、必ずしもこうした事実関係を反映しているわけではないことも記憶しておくべきであろう。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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