2012年09月29日
ショルティのマーラー:交響曲第8番《千人の交響曲》
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日本のクラシック批評史上最大の汚点として決して忘れてはいけないのが、20世紀おける偉大な指揮者サー・ゲオルグ・ショルティを不当に過小評価したことである。
日本のクラシック評論家連中は、ドイツ精神主義を最高のものとして崇め奉るため、楽譜に忠実な指揮をするショルティを「精神性がない」、「無機的」、「血が通っていない」とことあるごとに貶していた。
クラシックを聴き始めた頃の筆者は、この批評を鵜呑みにしてショルティを無視してしまった。
それが大間違いであったことに気が付いたのが10年近く経った頃であった。
以来、筆者はショルティを貶した評論家連中を信用しないようにしている。
ショルティが指揮したマーラーの交響曲第8番は、ショルティの代表作の一つである。
演奏時間は79分とCD1枚に収まっているが、せかせかしている印象はなく最初から最後まで充実した音楽を聴かせてくれる。
ショルティはバーンスタインのように感情移入やテンポの激変することはしないで楽譜に忠実に指揮している。
しかし、ショルティのすごいところは一音も無駄にすることなくしっかりと明瞭な音を鳴らしていることだ。
しかも、音に色彩感があり彫りが深く、オーケストラ、ソリスト、合唱を見事にコントロールして最高の音楽を引き出している。
マーラーの「第8」の数々のCDの中でもトップを争う名盤だと思う。
また、驚異的なのは1971年の録音なのに、最近のデジタル録音でも聴こえてこない楽器の音が次々と聴こえることである。
追記:生前のショルティを評価していた数少ない日本の評論家に吉田秀和氏がいる。
河出文庫から発売されている著書『マーラー』で、ショルティのマーラー演奏について吉田氏は的確で素晴らしい解説を書いているのでお薦めしたい。
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コメント一覧
1. Posted by 小島晶二 2022年05月27日 22:19

2. Posted by 和田 2022年05月27日 22:25
ショルティは実に力強くオケとコーラスを引っ張り、遅滞も乱れもなく完璧な音響表現を成し遂げました。第1部よりも第2部が一層鮮やかで、全演奏者が本当に1つになって頂点を目指すような、セッションレコーディングにおいても稀有な成果でしょう。ただ演奏するだけでも人手も経費の面でも大変な曲なのでしょうが、録音、オケの技術、歌手陣、音、全部考えうる最高の演奏だと思います。録音も極上で、最初のオルガンの音1つにしても神秘の合唱の銅鑼一発にしても最高、オーディオ的満足度の高さも相当なものがあります。聴き手は、今は無きゾフィエンザールの広大な空間に、全盛期のショルティ&シカゴ響がその超絶的なパワーを注いで鳴り響いたゴージャスな音響を、これも円熟期のK・ウィルキンソンが世界最高の録音技術をもってホールの空間ごと切り取ったスペクタクルサウンドにただ唖然とすることしか許されません。現在でもあらゆる要素において、最高水準のスタンダードであり、マーラーの「第8」の数々のCDの中でもトップを争う名盤だと思います。