2012年10月15日
アバド&ウィーン・フィルのベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」
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1986年5月 ウィーン、ムジークフェラインザールに於けるデジタル(ライヴ)録音。
アバドは、ベートーヴェンの交響曲の演奏に際しては、滑らかなフレージングをベースに旋律を歌い抜き、高貴な優美さを基調とした明るめのアプローチを行っている。
これは、ドイツ風の重厚な演奏とは一線を画する演奏であり、楽曲によってはいささか軽いという印象を与えるきらいがあった。
しかし、この「第9」については、そのような側面も随所に散見されるものの、アバドとしては重心の低い重厚な演奏を行っている。
特に、第1楽章に顕著であり、このように力強いアバドは他ではなかなかお目にかかれない。
第2楽章も堂々たるイン・テンポ。
第3楽章になるとアバドならではの歌謡性が全面に出てくるが、このようなアプローチが曲想と見事にマッチし、晩年のベートーヴェンならではの至高、至純の名旋律を気高く歌い上げている。
終楽章はオペラを得意としたアバドならではの真骨頂であり、旋律の歌いあげなど抜群のセンスを感じる。
ウィーン国立歌劇場の合唱も独唱陣も圧倒的な熱唱でアバドの指揮に応えている。
アバドがこれほどまでの名演を成し遂げることが出来たのも、頑固なまでに自分たちの流儀を押し通すウィーン・フィルの力量によるところが極めて大きいのではないかと思われる。
当時は新たなベートーヴェン像を打ち立てたと言われたCDだったが、今となっては実にスタンダードな演奏である。
後年に、手兵となったベルリン・フィルと2種の「第9」を録音したが、とても本盤の域には達しておらず、軽量級の凡演に陥ってしまっている。
アバドにもこんな時代があったのだと認識して欲しい1枚である。
SHM−CD化による音質向上は、いつもながら目覚ましい。
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