2012年10月19日
クレーメル&クレメラータ・パルティカのモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
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モーツァルトのヴァイオリン協奏曲はいずれも若書きの作品であり、例えばピアノ協奏曲などと比べると魅力が劣り、むしろ偽作と言われる第6番や第7番の方に軍配があがるほどであるが、今から20年以上も前に録音されたクレーメルとアーノンクールの組み合わせによる全集は、斬新な解釈によって、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の隠れた魅力を再認識させた画期的な名演であった。
ただ、クレーメルのヴァイオリンも十分に個性的ではあったが、アーノンクールの冷徹なアプローチが際立っている点もあり、両者の共同作業という印象が強かった。
現に、本盤のライナーノーツにおいても、クレーメルは、旧録音について、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の魅力を教示してくれたアーノンクールへの感謝を述べている。
この旧録音に対して、本盤は、クレーメルの個性が前面に出た名演と言える。
クレーメルのヴァイオリンが雄弁に語りかけてくるかのような弾き方にも好感がもてる。
今回はアーノンクールがいないのでクレーメル一人が全体を差配するわけだが、楽器はモダンでも十分にピリオド・スタイルを踏まえており、シャープかつ柔軟ないつもの美音も、もちろん健在。
弾き慣れのせいか、番号を追うごとにクレーメル色が強くなり、結局、第5番が最も個性的な出来映えで、爽やかな清涼水のような演奏だ。
クレメラータ・パルティカも実にソフトで優美な演奏を繰り広げているが、こうしたバックのソフトな下支えが功を奏して、クレーメルの決して甘くはならない冷徹で精緻なアプローチが一段と際立つことになっている。
室内楽のような雰囲気のなかで奏でられてゆくモーツァルトだが、これはこれで良いのではないだろうか。
まさに、クレーメルのこの20年以上にもわたる円熟を俯瞰させる渾身の名演と高く評価したい。
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コメント一覧
1. Posted by 小島晶二 2022年06月02日 09:54

2. Posted by 和田 2022年06月02日 10:03
いやー私は旧盤も大好きなんですよ。きわめて異質と思われるクレーメルとアーノンクールですが、解釈については意外なほど多くの接点を持っています。クレーメルが「アーノンクールによって、正統的な解釈の面白さや大切さに開眼させられた」と語っているように、現代楽器によりながら、モーツァルトのユニークな劇的起伏を見事に再現した聴きものです。一から十までアーノンクール色の強いモーツァルトですが、曲想とマッチしているせいか違和感を与えません。クレーメルの演奏も、モーツァルトの演奏から純粋な音以外の一切を拒否しようとするかのような厳しい姿勢を見せています。