2012年11月02日
グルダ・プレイズ・ショパン
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グルダのショパンというのはきわめて珍しい。
それもそのはず、本盤におさめられた楽曲の大半が、1950年代前半という若き日に録音されたものの、お蔵入りになっていたものだからである。
いやはや驚くべき演奏だ。
ピアノの音そのものは決していい状態ではないが、グルダがショパンを自在に扱っており、かつ音楽が自然に呼吸している。
どの曲も、いわゆる通説となっているショパンらしい優美な演奏とは言えない。
いかにもドイツ人らしいゴツゴツした武骨さを感じさせるものものしい演奏だ。
この野暮ったいほどの重々しい演奏は、はっきり言って、ショパンのファンからすれば許しがたい演奏かもしれない。
しかしながら、例えば有名な《24の前奏曲》の「雨だれ」。
このショパンの心臓の鼓動とも言われる苦悩に満ちた楽曲を、これほどまでにシンフォニックに演奏した例はあるだろうか。
「舟歌」も、華やかな表情の下にあるショパンの心の闇を見事に描出している。
したがって、ショパンを聴くというよりは、ベートーヴェンを聴くような崇高さを感じさせる演奏ということができるだろう。
グルダは超一級の演奏家であるにもかかわらず、演奏そのものより他のことばかりクローズアップする音楽ジャーナリズムの在り方に問題があると思った。
ちなみに《24の前奏曲》は、チューリッヒとグラーツのライヴ録音から息子のパウルがそれぞれ13曲と11曲を選んで再構成したもの。
どちらも全曲録音が残っているのに、それを素材として新たに全曲盤としたのは、いかにもグルダの息子らしい試みと言うべきであろう。
惜しいのは録音がいささか古い点で、グルダの透徹したタッチがややぼやけて聴こえるのは残念だ。
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