2012年11月04日
ヨッフム&ベルリン・ドイツ・オペラのワーグナー:ニュルンベルクのマイスタージンガー
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本盤とほぼ同時期に録音されたカラヤン&ドレスデン国立歌劇場管弦楽団盤が空前絶後の超名演だけに、その陰に隠れて過小評価されている演奏である。
さすがに指揮者やオーケストラの格などに鑑みると、どうしても旗色が悪い演奏ではあるが、歌手陣なども加味するとなかなかの佳演と評価してもいいのではなかろうか。
一語でいうと地味で素朴な風格を帯びた「ニュルンベルクのマイスタージンガー」である。
といってヨッフムの演奏は少しも鈍重でなく、温かく優しい表情の中にひとつひとつの音やモティーフをくっきりと鮮明に浮かび上がらせている。
本盤の魅力は、何といっても、両主役であるザックスとヴァルターに、それぞれフィッシャー=ディースカウ、プラシド・ドミンゴを配している点であろう。
フィッシャ=ディースカウはいつものように巧すぎるとも言える歌唱を披露しているが、それでも本盤ではそうした巧さがほとんど鼻につかない。
この役にはやや明るい声だが、ひとつひとつの言葉のもつ抜き差しならぬ意味を、微細な表情の中に鮮やかに歌い出している。
ドミンゴはいかにも色男らしさを描出しているが、それが若き騎士であるヴァルターという配役と見事に符合している。
これら両者と比較すると、エヴァ役のリゲンツァは、いささか線が細く、この点だけが残念だ。
べックメッサー役のヘルマンや、ポーグナー役のラッガーなど、脇を固める歌手陣も見事なパフォーマンスを示しており、合唱陣の名唱も相まって、本盤の価値をより一層高めることに大きく貢献している。
ヨッフムの指揮は、ドイツ音楽の伝統に根ざした、手堅い表現で、押し出しの立派な、風格のある演奏である。
いかにも職人肌の実直な指揮ぶりであり、ワーグナーの他のオペラだと平板な印象を与えかねない危険性を孕むアプローチであると思うが、楽曲が、ワーグナーとしては肩の力が抜けた「ニュルンベルクのマイスタージンガー」だけに、そのような不安はほぼ払拭され、総じて不満を感じさせる箇所はない名指揮ぶりであると言える。
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