2022年05月16日
アリス=紗良・オットという何十年に一人しか出てこない名ピアニストのデビュ−の時代に運良く居合わせていた!底知れぬ才能と器の大きさを感じさせるリスト:超絶技巧練習曲集
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2019年2月、難病の「多発性硬化症」と診断されたことを公表した天才ピアニスト、アリス=紗良・オット…。
『音楽家なので、同じ病で42歳で亡くなった天才チェロ奏者のジャクリーヌ・デュ・プレさん(1945〜87年)のことが頭に浮かびました。「動けなくなって、ピアノも弾けなくなるのか」と想像しました(公式ホームページより)』。
リストの超絶技巧練習曲集は、文字通り超絶的な技巧を要するとともに、ダイナミックレンジの広さやテンポの激しい変化など非常に振幅の激しい楽曲であり、弾きこなすためには卓越した技量はもちろんのこと、幅の広い豊かな表現力を要する難曲と言える。
このような難曲をデビュー曲に選んだだけでも、アリスのピアニストとしての底知れぬ才能とその器の大きさを感じざるを得ない。
第1曲や第2曲のたたみかけるような火の玉のような激しさはどうだろう。
打鍵も力強く、快速のテンポにいささかの弛緩もしない圧倒的な技量にも圧倒される。
第3曲の「風景」で、我々は漸く、アリスが女流ピア二ストであることを知ることになる。
ここの抒情は実に美しい。
有名な第4曲の「マゼッパ」は、堂々たる威厳に満ち溢れており、とても19歳のピアニストとは思えないスケールの雄大さだ。
第5曲の「鬼火」の軽快さも見事だし、第6曲の「幻影」や第8曲の「狩り」の重厚さも特筆すべきだ。
長大な第9曲の「回想」は、女流ピアニストならではの繊細な抒情が感動的だし、第11曲の「夕べの調べ」のまさに夕映えのような美しさや第12曲の「雪かき」の寂寥感の嵐にも大きく心を揺り動かされる。
ボーナストラックの「ラ・カンパネラ」も繊細さと重厚さのコントラストが見事な名演だ。
このように、アリスは、既に豊かな表現力を備えており、単なるテクニックだけのピアニストではない。
もしかしたら、我々は何十年に一人しか出てこない名ピアニストのデビュ−の時代に運良く居合わせているのかも知れないのだ。
例えば現役世代であればポリ−ニとか、故人ではリパッティとか、彼らに共通するのは、完璧なピアノ技巧と高い音楽性の両方を持ち合わせている点。
彼女もまさにこの2つ持ち合わせたピアニストであり、将来が楽しみな逸材と思っていたのも束の間に悲報が伝えられる。
「働きすぎないで」と涙ながらに祈念しつつ、今後のアリスの更なる成熟をあたたかく見守りたい。
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