2022年05月21日
悲劇のピアニストにならないことを日々切に祈っています🤦♂️アリス=紗良・オットのショパン:ワルツ集
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アリスが、デビュー盤であるリストの超絶技巧練習曲集の次に選んだのは、それとは全く対照的なショパンのワルツ集であったのは少々意外であった。
これは実にすばらしい名演であり、あらためて、アリスの幅の広い豊かな表現力を思い知らされる結果となった。
ショパンのワルツ集は、うわべだけの美しさだけを追求した演奏だと、陳腐なサロン音楽と化してしまう危険性があるが、アリスの手にかかると、実に高踏的な大芸術作品に変貌する。
第1曲である「華麗なる大円舞曲」からして、他のピアニストの演奏とは全く次元が異なる個性的な解釈を見せる。
中間部の魔法のようなテンポのめまぐるしい変化は、聴いていてワクワクするほどで、あざとさなどいささかも感じさせない。
それどころか、どんなに奔放とも言える弾き方をしても、常に気品に満ち溢れているのが、アリスの最大の長所と言えるだろう。
「子犬のワルツ」の愛称で有名な作品64の1も、他のピアニストなら軽快なテンポであっという間に駆け抜けてしまうところを、アリスはややゆっくりめのテンポで優雅に演奏している。
そこに漂う高貴な優美さには頭を垂れざるを得ない。
「別れのワルツ」で有名な作品69の1も、決して感傷的には陥らず、決して気品を失わないエレガントな抒情を湛えている。
このようにアリスは、ショパンの華やかで宮廷的なワルツと 内省的な、瞑想的なワルツとの弾き分けが実に見事で、それだけでも物凄い才能を感じる。
ボーナストラックのノクターン嬰ハ短調も、深沈とした憂いのある、それでいて気品溢れる美しい抒情を湛えており、アリスの将来性豊かな才能が全開であった。
本盤のような名演に接すると、他のショパンの諸曲もアリスの演奏で聴いてみたいと思ったのは筆者だけではあるまい。
本演奏の数年後には多発性硬化症という不治の病を患い、ピアノを弾くことがかなわなくなるのである(リパッティの最期もショパンのワルツ集なだけに背筋が凍る)。
アリスのこのような凄みのあるピアノ演奏は、あたかも自らをこれから襲うことになる悲劇的な運命を予見しているかのような、何かに取り付かれたような情念や慟哭のようなものさえ感じさせる。
もっとも、今となっては我々聴き手がそのような色眼鏡でのピアノを鑑賞しているという側面もあるとは思うが、いずれにしても彼女の並外れた豊かな才能は、我々聴き手の肺腑を打つのに十分である。
とにかく日々この若きピアニストを動向が気になってしかたがなく、彼女のツィッターを常にチェックしている。
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