2012年12月26日
クイケンのバッハ:マタイ受難曲
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マタイ受難曲は、かつては大編成のオーケストラと合唱団による壮麗な演奏がもてはやされた時代があった。
戦前のメンゲルベルクと戦後のリヒター(旧盤)は双璧とされた名演であり、その他にもクレンペラーやカラヤンによる重厚な名演もあった。
しかしながら、最近では、ピリオド楽器を活用したり、合唱も小編成によるものが主流となり、マタイ受難曲の演奏様式もすっかりと様変わりすることになった。
それも、単に時代考証的な演奏にとどまるのではなく、芸術的な水準においても十分に満足できる極めて水準の高い名演が生まれているのは、マタイ受難曲ファンとしても大変うれしい限りだ。
そして今般、コープマンやレオンハルト、コルボなどの名演の列に、本盤のクイケン盤が加わることになった。
小編成のオーケストラ、そしてきわめて小規模な合唱団故に、スケールの小ささは否めない。
例えば、イエスが逮捕される箇所のつつましい表現など、リヒター盤やカラヤン盤のような劇的迫力を期待していると完全に肩透かしをくらわされる。
しかしながら、一聴すると淡々と進行しているように見えて、実はその曲想の描き方の何と言う純真無垢さ。
恣意的な箇所はいささかもなく、どこをとっても敬虔な祈りに満ち溢れた至高・至純の美しさを湛えていると言える。
ラ・プティット・バンドの演奏はミサ曲ロ短調を上回る素晴らしいもので、これも20数年前のレオンハルトの記念碑的名盤以来であり、もしかすると、ジギスヴァルト・クイケンのキャリアの頂点ではないだろうか。
バッハの音楽の、そして西洋キリスト教文化の奥深さに、深い感動とともに心が誘われる尊い、稀有な名盤だと思う。
残響を取り入れた録音も極上の極みであり、SACDマルチチャンネルによって、この世のものとは思えないような美しい音場が形成されるのが素晴らしい。
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