2012年11月22日
ケーゲル&都響のマーラー:交響曲第7番「夜の歌」
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このような超個性的な名演を発掘した東武レコーディングズの快挙である。
マーラーの「第7」は、場面の変遷が激しく、大変音符の多い楽曲だけに、うまく纏めるのが難しい交響曲である。
ケーゲルは、全体として、各旋律の輪郭をはっきりさせ、幾何学的に計算され尽くしたアプローチを行っているが、それでいて劇的な迫力や情感の豊かさにもいささかの不足はなく、相反する要素を高次元でコラボさせた稀有の名演と言うことができるだろう。
第1楽章は、粘るようなテンポ、アッチェレランドの駆使、そして効果的なゲネラルパウゼが実に印象的である。
特に、中間部のゆったりとしたテンポによる抒情豊かな演奏は、これこそ「夜の歌」というべき深沈たる雰囲気に満ち溢れている。
第2楽章は、実に生真面目な演奏だ。
しかしながら、そこから漂ってくる何と言う不気味さ。
これは夜想曲ではなく、まるで死神のワルツだ。
各楽器の響かせ方は、カウベルの力強さも相まって、独特の不気味な雰囲気を醸し出すのに大きく貢献している。
第3楽章は速めのテンポで、一聴すると何でもないように演奏しているが、スパイスの効いた各楽器の生かし方は超個性的だ。
特に、中間部のテンポ設定は独特で、終結部のトロンボーンの力奏や、ラストのティンパニの一撃の凄まじさなど、初めて聴くような場面が連続する。
第4楽章は、それまでのシリアスな雰囲気とは一転して、官能的な夜の世界が出現する。
冒頭の独奏ヴァイオリンの極端なグリッサンドや、ホルンの甘いヴィブラートなど、情感過多な妖しい世界に聴き手を導いていく。
この過激とも言える濃厚な表現こそ、世紀末芸術家マーラー演奏の醍醐味と言うべきである。
終楽章は、ここにきてケーゲルの秘められたパッションが大爆発。
中途でのテンポの激変や猛烈なアッチェレランドなど個性的な解釈をふんだんに駆使して、圧倒的な迫力のうちに大団円を迎えるのである。
東京都交響楽団は、若杉やインバル、ベルティー二に鍛え抜かれた我が国最高のマーラー・オーケストラと言えるが、本演奏でもケーゲルの個性的な棒にしっかりと応えている点を高く評価したい。
演奏終了後の熱狂も当然で、演奏会場にいた聴衆に羨望の念を禁じえない。
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