2013年02月26日
ハイティンク&ロンドン響のR.シュトラウス:アルプス交響曲
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実になだらかで、起伏のない美しい演奏だ。
これほどわめいたりしない静的な演奏は、アルプス交響曲では初めてではないだろうか。
いかにも、晩年になって、穏健派に磨きがかかったハイティンクらしい。
なお、ハイティンクの「穏健」と彼の音楽性を結びつけてメリハリのない演奏のように評している人がいるが、よく聴けばこれが的外れだということが分かるだろう。
したがって、冒頭の夜明けのゆったりとしたテンポ設定などは雰囲気満点であり、嵐が過ぎ去った後の一日の回想についても、その美しさが際立っている。
しかしながら、登山の部分は、あまりにも起伏がなさ過ぎて、果たしてこのような緩慢な足取りで登頂できるのかいささか不安になる。
氷河の危険も、眼前に安全策が施されているようだ。
頂上に至っては、かなり標高の低い山に登ったかのように、眼前にはスケールの大きいパノラマが殆ど浮かび上がってこない。
嵐もどこか抑制がかかっており、あたかも実験室での風洞実験のような趣きだ。
前述のように、美しい演奏ではあり、評価すべき箇所も多少は散見されるものの、それが表面的なレベルにとどまっており、きわめて底の浅い凡演だと酷評せざるを得ない。
コンセルトヘボウ管との旧録音が希代の名演だっただけに期待して聴いたのだが……。
SACDマルチチャンネルによる高音質録音は実に鮮明で見事なものであり、録音面においては評価したいが、こうした高音質録音が不幸にも演奏の底の浅さを露呈することに繋がっており、何とも虚しい気持ちにさせられるのは大変残念なことだ。
さしずめ自分で険しい山を登っているというよりは美しい映像作品を見ているような感じであり、なかにはこういった演奏を好む人もいるのではないかと思い、敢えて採り上げた次第だ。
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