2013年03月30日
「グールドのゴルトベルク(1955年盤)」再創造
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1955年の録音の再創造とのことであるが、バッハ演奏の歴史的な転換点になった衝撃的な名演に対する、このような試み自体には反対するものではない。
しかしながら、こうした試みは、音楽学者にとっては画期的なものであっても、芸術的な感動とは別物のように考えている。
グールドは、かなり早い段階から、聴衆の入るコンサートを拒否し、ひたすらスタジオでのレコーディングを中心として活動してきた。
したがって、グールドにとっては、スタジオ録音そのものが、自らの芸術を世に問う唯一の機会であった。
スタジオ録音の際には、グールドは鼻歌をうたったり、ハミングしたりするし、時には椅子が軋む音すらそのままに収録しているが、こうした所為のすべてが、グールドにとっては、自らの芸術の一大要素であったのである。
ところが、本CDには、ピアノ以外の音はすべて消去(抹殺との表現を敢えて使いたい)されており、ただただコンピュータじかけとも言うべき音が紡ぎだされていく。
グレン・グールドがグレン・グールドである所以は、スタジオ録音にあるので、トロントCBCスタジオというロケーションはまさにうってつけ。
さらに、彼の歌声があれば完璧なアンデッド・グールドの誕生であるがどうだろうか?
聴きようによっては、ここには血も涙もない機械音だけが流れるという、実に寒々とした音響が創造されているのだ。
要するに、音響であって音楽ではないのだ。
たとえ、マルチチャンネル付きのSACDによる高音質録音であっても、筆者としては、そのような音響は願い下げである。
前述のように、このような試み自体には必ずしも反対ではないので、一定の評価はするが、音楽芸術としての感動からは程遠いと言わざるを得ない。
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