2013年03月29日
インバル&都響のベートーヴェン:交響曲第5番「運命」、交響曲第7番
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これは素晴らしい名演で、汲めども尽きせぬ魅力に満ちた演奏である。
インバルは、ブルックナーにおいては初稿の録音を行うなど、相当の拘りを見せているが、ベートーヴェンの交響曲においては、最近流行のピリオド楽器の使用や古楽器奏法には見向きもしない。
いわゆる正攻法の旧スタイルによる演奏を終始貫いている。
しかしながら、古臭さは皆無であり、ベートーヴェンの交響曲第5番、そして第7番の魅力をゆったりとした気持ちで味わうことができる点を高く評価したい。
一見、昨今の時流に反した大編成のオーケストラによる大時代的なベートーヴェンに聴こえるが、実際にそこから立ち現れてくる音楽は、あらゆる意味において紋切り型のイメージを打ち破るものである。
だからと言って、奇を衒ったアプローチや音響は皆無であり、演奏の根底にあるのは、インバルの指揮の下、それぞれのパート譜が内包する音楽を最大限正確かつ真摯に表わし尽くそうとする都響の各奏者のもちろん高度な能力に裏付けられた献身的な姿勢である。
そういった各奏者が放つ瞬間瞬間の音楽の充実が、一貫して比較的余裕を持ったテンポ感に基づいて設定される大きくて風通しのよい音楽空間の中に展開し、あたかも誕生間もない宇宙のような、多様な種類のエネルギーに満ちた高密度の時空を作り出している。
そのエネルギーは、「精神」という言葉を用いて表現したくなる何かであり、つまりはベートーヴェンの言葉に他ならない。
第5番は、全体として重厚な響きが支配しているが、特に第2楽章など、品のいいレガートが絶妙な効果をあげている。
近年のベートーヴェン演奏においては、古楽器奏法などを意識するあまり、このレガートを軽視・蔑視する傾向が強いが、本名演は、現代の軽妙浮薄なベートーヴェンに対する力強いアンチテーゼと言えよう。
第7番は、第5番とは異なり、重厚な響きよりは、軽快なリズム感を重視した印象が強いが、それでも、随所に見られる美しいレガートやここぞという時の強靭な迫力は、現代の指揮者による演奏とは一線を画する極めて高いレベルに仕上がっていると言える。
SACDによる高音質録音も非常に鮮明であり、本名演の価値を高めるのに大きく貢献している。
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