2013年04月25日
テンシュテット&ロンドン・フィルのマーラー:交響曲第8番(1991年ライヴ)
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壮絶な超名演だ。
テンシュテットは、1970年代の後半から1980年代の中頃にかけて、手兵のロンドン・フィルとともにマーラーの交響曲全集(スタジオ録音)を完成させた。
その中でも、「第8」(1986年録音)は全集の有終の美を飾る名演として特に高い評価を得てきたが、本盤は、それを更に上回る感動的な超名演だ。
ライヴ録音特有のオーケストラ演奏の瑕疵も一部に聴かれるなど、演奏全体の安定性といった観点からは1986年盤の方を採るべきであろうが、本盤の超名演を聴き終えた後の深い感動からすれば、そのような瑕疵など全く問題にならない。
テンシュテットは、前述の全集の完成直後に咽頭がんを患い、闘病生活を経て奇跡的な復帰を遂げたが、その後は健康状態がいい時に限ってコンサートが行われた。
したがって、コンサートの数は限られたが、それだけにそのコンサートの一つ一つが命がけのものであった。
その命がけのコンサートの記録の一部が既に発売されており、こうして発売された「第1」、「第2」、「第5」、「第6」、「第7」のライヴ録音(EMI、LPO自主レーベル)は、いずれ劣らぬ壮絶な超名演であった。
マーラーは、愛娘の死などの経験から死を異様なまでに恐れたが、その一方で、人一倍楽天家でもあった。
そうしたマーラーの特異な性格は楽曲にも反映されることになり、その交響曲の本質は、他にもいろいろと考えられるが、基本的には、死との闘いと生への憧憬や妄執にあったと言える。
テンシュテットの晩年の心境は、マーラーの交響曲の本質と見事に合致するところがあり、このような指揮者と作曲者の心身の一体化が、かかる超名演を生み出す原動力になったものと考える。
本盤も、そうした一連の超名演に連なるものだと言える。
思い切ったテンポ設定の変化といい、幅の広いダイナミックレンジといい、テンシュテットのドラマティックな指揮ぶりは際立っているが、その壮絶な命がけの演奏は、我々聴き手の肺腑を打つのに十分な圧巻の迫力に満ち溢れている。
テンシュテットの壮絶な指揮の下、ロンドン・フィルも、そして合唱団や独唱陣も最高のパフォーマンスを示しているのも素晴らしい。
録音も鮮明であり、申し分のないレベルに達していると言える。
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