2013年05月08日
ガーディナー&ウィーン・フィルのメンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」/第5番「宗教改革」
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ルーペルト・シェトレ著の「舞台裏の神々」には、明らかにガーディナーのことを指摘しているとわかるような記述がある。
それによると、ウィーン・フィルはガーディナーのことを「イギリス系のひどくいけ好かない」指揮者と考えていたようで、シューベルトの交響曲第9番「ザ・グレート」のリハーサルの際にもひどく巧妙な復讐を企てたらしい。
ガーディナー自身もテンポ感覚が全くなかったようで、本盤の交響曲第4番の録音の際には400箇所にも及ぶ継ぎはぎが必要であったとのことである。
これによって、ガーディナーはDGからレコード録音の契約解除を言い渡されたということらしい。
したがって、本盤に収められた演奏についても、事後にかなりの編集が行われたと言えるが、その上で仕上がった演奏(作品)としては、素晴らしい名演と高く評価したいと考える(ルーペルト・シェトレの指摘のように、編集技術の絶大な威力のおかげと言えるのかもしれない)。
少なくとも、本演奏を聴く限りにおいては、ガーディナーとウィーン・フィルの緊張した関係を感じさせるものは何もないと言える。
本演奏で素晴らしいのは、何よりもウィーン・フィルの奏でる音の美しさと言うことであろう。
メンデルスゾーンの交響曲第4番及び第5番の他の指揮者による名演について鑑みれば、トスカニーニ&NBC交響楽団による超名演(1954年)を筆頭として、ミュンシュ&ボストン交響楽団による名演(1957〜1958年)、カラヤン&ベルリン・フィルによる名演(1971年)、第4番だけに限るとアバド&ベルリン・フィルによる名演(1995年)などが掲げられる。
したがって、ウィーン・フィルを起用した名演は皆無と言えるところであり、その意味でもウィーン・フィルによる両曲の演奏は大変に貴重ということができるのではないだろうか。
ガーディナーには大変申し訳ないが、本演奏にはバロック音楽における個性的な指揮で素晴らしい名演の数々を成し遂げている常々のガーディナーは存在していない。
むしろ、ウィーン・フィルがCDとして演奏を商品化するに当たって、「イギリス系のひどくいけ好かない」指揮者を黙殺して、自分たちだけでもこれだけの美しい演奏ができるのだというのを、自らのプライドをかけて誇示しているようにさえ思われるのだ。
もっとも、我々聴き手は演奏に感動できればそれでいいのであり、これだけ両曲の魅力、そして美しさを堪能させてくれれば文句は言えまい。
なお、本盤には、メンデルスゾーン自身が後年に第2〜4楽章に施した交響曲第4番の改訂版が収められており、世界初録音という意味でも貴重な存在である。
これは、いかにもバロック音楽などにおいても原典を重んじるガーディナーの面目躍如とも言える立派な事績であると考える。
録音は従来盤でも十分に満足できる高音質ではあったが、今般のSHM−CD化によって音質はより鮮明になるとともに、音場が広くなったように思われる。
ウィーン・フィルによる希少な両曲の美しい名演を、SHM−CDによる高音質で味わうことができるのを大いに喜びたい。
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