2013年06月08日
テンシュテット&ロンドン・フィルのマーラー:交響曲第3番(1986年ライヴ)
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
凄い超名演だ。
これほどまでに心が揺さぶられる演奏は、他にもほとんど例がないと言っても過言ではあるまい。
テンシュテットは、1985年に咽頭がんを患った後は、健康状態を確認しながら一つ一つのコンサートにそれこそ命がけで臨んでいた。
もっとも、本演奏が行われた1986年は、いまだ病状が深刻化しておらず、コンサートの数も比較的多かったとのことであるが、それでも演奏にかける渾身の情熱には尋常ならざるものがあったと言えるのではないか。
本盤の演奏についても、楽曲の性格からして第2番や第5番、第6番の豪演ほどの壮絶さはないものの、それでも凄まじいまでの迫力を誇っているというのは、まさにそれをあらわしていると言えるだろう。
第1楽章冒頭の8本のホルンによる壮麗な咆哮からして、とてつもないエネルギーが充満している。
その後は、第1楽章及び第2楽章ともに、迫りくる死に追い立てられているような焦燥感さえ感じさせるやや速めのテンポを基調としつつ、変幻自在のテンポの振幅、そして思い切った強弱の変化、猛烈なアッチェレランドやディミヌエンド、そしてゲネラルパウゼなどを大胆に駆使して、ドラマティックの極みとも言うべき劇的な豪演を展開している。
そして、演奏のどこをとっても切れば血が噴き出てくるような圧倒的な生命力と強靭な気迫に満ち溢れており、加えて、すべての音に尋常ならざる熱き情感が込められるなど、その凄みのある表現は我々聴き手の肺腑を打つのに十分な圧巻の迫力を誇っている。
第3楽章や第4楽章において、中庸のテンポによって楽想を徹底して心を込めて歌い上げていくのも感動的であると言えるし、第5楽章の合唱も清澄にして崇高な美しさを誇っている。
また、終楽章の奥行きの深い表現は出色のものがあり、まさにマーラーの全交響曲を貫くテーマの一つである生への憧憬と妄執を見事に音化し尽くしたものとも言えるだろう。
テンシュテットは、交響曲第3番を本演奏の7年前の1979年にもスタジオ録音しており、それも素晴らしい名演であったが、強靭な気迫や渾身の生命力、そして、迫りくる自らの死を予見していたが故に演奏全体に漲っているとも言える心を込め抜いた熱き情感において、本演奏には到底及ばないものと考える。
また、必ずしも一流とは言い難いロンドン・フィルも、テンシュテットの命がけの渾身の指揮に必死になって喰らいつき、おそらくは持ち得る実力以上のものを発揮した大熱演を繰り広げたことも、本超名演に大きく貢献しているのを忘れてはならない。
第4楽章のメゾ・ソプラノのヴァルトラウト・マイアーによる独唱や、第5楽章のイートン・カレッジ少年合唱団やロンドン・フィルハーモニー合唱団による合唱も、その実力を十二分に発揮した最高のパフォーマンスを発揮していると言っても過言ではあるまい。
いずれにしても、マーラーの交響曲第3番の名演としては、同じくライヴ録音でもあるバーンスタイン&ニューヨーク・フィルによる至高の超名演(1988年)が存在しているが、本演奏もそれに肉薄する圧倒的な超名演と高く評価したい。
音質も、1986年のライヴ録音としては、ロンドン、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールの残響を生かした十分に満足できるものであり、テンシュテットによる超名演を良好な音質で味わうことができることを大いに喜びたい。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。