2013年06月09日
東京弦楽四重奏団のシューベルト:弦楽五重奏曲(ワトキン)、弦楽四重奏曲第12番「四重奏断章」
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シューベルトの室内楽曲の最高峰、それどころかシューベルトによるあらゆる楽曲の最高傑作の一つでもある弦楽五重奏曲ハ長調は、シューベルトの最晩年の心底に潜む寂寥感が随所に滲み出てくるような旋律の清澄な美しさが魅力の珠玉の名品である。
これだけの傑作であるにもかかわらず、同曲のSACD盤は現在においても存在していない。
特に、第2楽章のこの世のものとは思えないような繊細な美しさは、SACDによる高音質によってはじめてその真の魅力を味わうことが可能と言っても過言ではあるまい。
そのような長年の渇きを癒してくれる素晴らしいSACD盤が登場したのは何という素晴らしいことであろうか。
しかも、マルチチャンネルが付いていることもあって、臨場感溢れる音場の幅広さには出色のものがあり、同曲の美しさ、素晴らしさを望み得る最高の音質で味わうことができるという本盤の意義は極めて大きいと言わざるを得ないだろう。
そして、演奏内容も実に素晴らしい。
東京弦楽四重奏団に、ベテランのチェロ奏者であるデイヴィッド・ワトキンを加えたアンサンブルは絶妙であり、その息の合った名コンビぶりは、本名演に大きく貢献していると言ってもいいのではないだろうか。
また、東京弦楽四重奏団とデイヴィッド・ワトキンによる本演奏におけるアプローチは、曲想を精緻に、そして情感豊かに描き出していくというオーソドックスとも言えるものだ。
したがって、聴き手を驚かすような特別な個性などは薬にしたくもないが、それでも淡々と流れていく各旋律の端々からは、独特の豊かな情感が滲み出していると言えるところであり、シューベルトの最晩年の心底にある寂寥感や絶望感をほのかに感じさせてくれるのが見事である。
また、東京弦楽四重奏団の各奏者は、世界に6セットしかないと言われているパガニーニ選定のストラディヴァリウスを使用しており、それによって醸し出される独特の美しい音色は、本演奏に独特の潤いと温もりを付加させているのを忘れてはならない。
併録の、弦楽四重奏曲第12番ハ短調「四重奏断章」も、東京弦楽四重奏団のかかる美質があらわれた素晴らしい名演に仕上がっていると評価したい。
そして、本盤で素晴らしいのは、前述のようにマルチチャンネル付きのSACDによる極上の高音質録音である。
音質の鮮明さ、臨場感など、どれも一級品の仕上がりであり、あらためてSACD盤の潜在能力の高さを思い知った次第だ。
いずれにしても、シューベルトの最晩年の最高傑作である弦楽五重奏曲の東京弦楽四重奏団とデイヴィッド・ワトキンによる素晴らしい名演を、マルチチャンネル付きのSACDによる極上の高音質で味わうことができるのを大いに喜びたい。
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