2013年06月15日
ベーム&ウィーン・フィル1977年3月11日来日公演ライヴ
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一昨年、ユニバーサルがSACDの発売を再開してから、SACD復活の兆しが見られつつあったところであるが、昨年より、EMI、アルトゥスが相次いで発売を開始。
そして、一時はBlu-spec-CDでお茶を濁していたソニークラシカルまでがヴァントによる過去の超名演のSACD化を開始した。
SACDの発売に対して消極的姿勢に転じつつあるオクタヴィアには若干の疑問を呈したいところであるが、パッケージメディアが瀕死の状態にある中で、極めて実りの多い状況になりつつあると言えるのではないだろうか。
そのような良好な流れの中で、日本コロムビアがシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤の発売を昨年より開始するとともに、今般、FM東京のアーカイヴ録音を発売していたTDKの版権を獲得して、その貴重な名演の数々のシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD化を開始したというのは、実に素晴らしいことであると言えるだろう。
今回は、その第1弾として、没後30年を迎えたベームと、本年惜しくも逝去されたザンデルリンクによる歴史的な来日公演の際の名演がSACD化の対象として選定されたのは、その演奏の素晴らしさから言っても見事な選択と言っても過言ではあるまい。
本盤には、ベームが1977年に3度目の来日を果たした際のライヴ録音を収めており、楽曲は、モーツァルトの交響曲第29番、ブラームスの交響曲第2番、R・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」など、ベームのお得意のレパートリーで占められているのが特徴である。
先ず、モーツァルトの交響曲第29番であるが、ベームは同曲のスタジオ録音を繰り返して行っており、名高いのはベルリン・フィルとの交響曲全集(1959年〜1968年)に含まれる演奏、そして最晩年のウィーン・フィルとのスタジオ録音(1979年)である。いずれ劣らぬ名演であるが、実演でこそその真価を発揮するベームだけに、演奏の持つ根源的な迫力や音楽をひたすら前進させていこうという強靭な生命力において、本演奏は頭抜けた存在と言えるのではないだろうか。
全体の堅固な造型、そしてシンフォニックな重厚さを兼ね備えたいわゆる旧スタイルの演奏ではあるが、軽妙浮薄なモーツァルトの交響曲の演奏様式が定着しつつある現代においてこそ存在価値がある、まさに古き良き時代の味わい深さを多分に有した素晴らしい名演と高く評価したい。
加えて、最晩年のベームならではのゆったりとしたテンポによる演奏には、深沈とした独特の味わい深さがある。
ブラームスの交響曲第2番については、ベームは、ベルリン・フィル(1956年)及びウィーン・フィル(1975年)とともに2度にわたってスタジオ録音を行っている。
このうち、特にウィーン・フィルとの演奏は素晴らしい名演であるが、モーツァルトの交響曲第29番と同様に、トゥッティに向けて畳み掛けていくような気迫といい、演奏の持つ圧倒的な力強さといい、本演奏こそはベームが遺した同曲の最高の名演と言っても過言ではあるまい。
R・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」は、シュターツカペレ・ドレスデンとのスタジオ録音(1957年)以来の録音ということになるが、これはそもそも本演奏とは勝負にならない。
本演奏の持つ、切れば血が噴き出てくるような強靭な生命力は、とても83歳の老巨匠とは思えないほどの圧倒的な迫力を誇っており、ベームとしても会心の名演と言えるのではないだろうか。
その他にも、ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲なども収められており、ゲネプロではあるが、同時期のスタジオ録音(1978年)とは比較にならないほどの素晴らしい名演と高く評価したい。
ウィーン・フィルも、ベームの統率の下、持ち得る実力を十二分に発揮した最高のパフォーマンスを発揮している。
音質は、シングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤だけに、従来CD盤とはそもそも次元の異なる高音質である。
音質の鮮明さ、音場の幅広さ、音圧のいずれをとっても一級品の仕上がりであり、あらためてSACD盤の潜在能力の高さを思い知った次第だ。
いずれにしても、ベームによる至高の超名演を、現在望み得る最高の高音質SACD盤で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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