2013年06月30日
リパッティ/ピアノ・リサイタル
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ディヌ・リパッティによる名演としては、ショパンのワルツ集の録音(1950年)が極めて名高い存在と言えるが、その他に遺された録音も、必ずしも数多いとは言い難いが、そのすべてが素晴らしい名演であると言っても過言ではあるまい。
モノラル録音という音質面でのハンディがあることから、より録音の優れた演奏の方にどうしても惹かれてしまうところであるが、それでもたまにリパッティの演奏を耳にすると、とてつもない感動を覚えるところだ。
本盤に収められたバッハのピアノ曲の小品やスカルラッティのソナタを軸とした小品集も、リパッティの表現力の幅の広さを感じさせる至高の超名演と言える。
リパッティによる本演奏の魅力は、何と言っても1940年代〜1950年の演奏であるにもかかわらず、いささかも古臭さを感じさせず、むしろ現代の様々なピアニストの演奏に通ずる清新さを秘めている点にある。
そして、それだけにとどまらず、楽曲の核心に鋭く切り込んでいくような彫りの深さ、そして、何よりも忍び寄る死に必死で贖おうとする緊迫感や気迫が滲み出ている。
いや、もしかしたら、若くして死地に赴かざるを得なかった薄幸のピアニストであるリパッティの悲劇が我々聴き手の念頭にあるからこそ、余計にリパッティによる本演奏を聴くとそのように感じさせられるのかもしれない。
いずれにしても、リパッティによるかかる命がけの渾身の名演は、我々聴き手の肺腑を打つのに十分な底知れぬ迫力を有しており、リパッティによる本盤の演奏は、あまた存在している様々なピアニストによるこれらの各楽曲の演奏の中でも、別格の深みを湛えた至高の超名演と高く評価したい。
このような至高の超名演を聴いていると、あらためてリパッティのあまりにも早すぎる死がクラシック音楽界にとっていかに大きな損失であったのかがよく理解できるところだ。
もっとも、リパッティによる本盤の各楽曲の演奏は、演奏自体は圧倒的に素晴らしいが、モノラル録音というハンディもあって、その音質は、前述のように鮮明さにいささか欠ける音質であり、時として音がひずんだり、はたまた団子のような音になるという欠点が散見されたところであった。
ところが、今般、ついに待望のSACD化が行われることによって大変驚いた。
とりわけ、1950年に録音されたバッハの4曲については、従来CD盤とは次元が異なる見違えるような、そして1950年のモノラル録音とは到底信じられないような鮮明な音質に生まれ変わった。
リパッティのピアノタッチが鮮明に再現されるのは殆ど驚異的であり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第である。
他方、スカルラッティの2曲や、ショパンの「舟歌」、ラヴェルの「道化師の朝の歌」については、今般のSACD化を持ってしてもいささか鮮明さに欠けているが、それでも従来CD盤との違いは明確であり、これだけ堪能させてくれれば文句は言えまい。
いずれにしても、リパッティによる至高・至純の名演奏を、SACDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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