2013年07月06日

ティルソン・トーマス&サンフランシスコ響のマーラー:交響曲全集


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ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団によるマーラーの交響曲全集は、2001年9月の交響曲第6番を皮切りとして、2009年のさすらう若人の歌に至るまで、約10年の歳月をかけて成し遂げられたものである。

本全集のメリットはいくつかあるが、先ずは何よりも全曲がマルチチャンネル付きのSACDによる極上の高音質であるという点である。

マーラーの交響曲のような大編成のオーケストラ曲には、臨場感溢れるSACDが相応しいと思われるが、これまでのところSACDによる全集は、本全集のほかはバーンスタイン&ニューヨーク・フィル等による最初の全集(1960〜1975年)、ジンマン&トーンハレ管による全集(2006〜2010年)しか存在していないところだ(現在、マーツァルやゲルギエフ、ヤンソンスなどによる全集が進行中であるが完成までにはまだまだ時間を要すると思われる)。

これはきわめて嘆かわしい状況にあるが、その分、本全集の価値がより一層高まることになると言えるだろう。

次いで、本全集にはカンタータ「嘆きの歌」が含まれているということである。

カンタータ「嘆きの歌」は、その後の交響曲の萌芽を聴くことが可能なマーラーの最初期の意欲作であるが、同曲の録音は著しく少ない状況にあり、バーンスタインやジンマンも同曲を録音していない。

その意味では、本全集はマーラーのほぼ完全な全集であるという意味においてその価値は極めて高いものである(歌曲集「子供の魔法の角笛」が全曲ではなく、抜粋であることだけが唯一惜しい点である。また、第10番についてはクック版などの輔弼版には目もくれず、アダージョのみとしたのも大変興味深い)。

そして、何よりも演奏が素晴らしいということである。

ティルソン・トーマスは、バーンスタインやテンシュテットのようにドラマティックな演奏を行っているわけではない。

むしろ、直球勝負であり、曲想を精緻に、そして丁寧に描き出していくというものだ。

加えて、オーケストラを無理なくバランス良く鳴らし、マーラーの作曲した数々の旋律を実に明瞭に美しく響かせるべく腐心しているように思われる。

それでいて、スコアに記された音符のうわべだけをなぞっただけの浅薄な演奏にはいささかも陥っておらず、どこをとっても豊かな情感とコクに満ち溢れているのが素晴らしい。

まさに、純音楽的な演奏と言えるところであり、マーラーの交響曲の魅力を安定した気持ちで満喫できるという意味においてはきわめて優れた名演である。

かかるアプローチは、同じくSACDによる全集完成に向けて進行中のマーツァル&チェコ・フィルによる演奏と似通っている面が無きにしも非ずであるが、マーツァル盤は、マーラーがボヘミア出身であることに着目した独特の味わい深さが演奏の底流にあるのに対して、本ティルソン・トーマス盤は、マーラーをその後の新ウィーン派に道を開いた20世紀の音楽家として捉えているという点に違いがあると言えるのかもしれない。

また、完成に約10年の歳月を費やした全集であるにもかかわらず、本全集では各交響曲や歌曲毎の演奏の出来にムラが殆どないというのも見事である。

サンフランシスコ交響楽団も、ティルソン・トーマスの確かな統率の下、ライヴ録音とは思えないような安定した技量を発揮して、望み得る最高の演奏を繰り広げているのも、本名演に大きく貢献しているのを忘れてはならない。

いずれにしても、本全集は、マーラーの交響曲の魅力を、望み得る最高の臨場感溢れる高音質により安定した気持ちで満喫できるという意味において、自信を持ってお薦めできる名全集と高く評価したい。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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