2013年07月10日
インバル&チェコ・フィルのマーラー:交響曲第5番
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インバルが東京都交響楽団を指揮して演奏したマーラーの「第2」や「第3」は素晴らしい名演であったが、本盤に収められたチェコ・フィルとの「第5」も素晴らしい名演と高く評価したい。
インバルは、マーラーの「第5」をかつての手兵フランクフルト放送交響楽団とスタジオ録音(1986年)するとともに、東京都交響楽団とのライヴ録音(1995年)もあるが、本演奏は、それら両演奏をはるかに凌駕する名演と言える。
かつてのインバルは、マーラーへの人一倍の深い愛着に去来する内なるパッションをできるだけ抑制して、できるだけ音楽に踏み外しがないように精緻な演奏を心掛けていたように思われる。
したがって、全体の造型は堅固ではあり、内容も濃密で立派な演奏ではあるが、ライバルとも目されたベルティーニの歌心溢れる流麗さを誇るマーラー演奏などと比較すると、今一つ個性がないというか、面白みに欠ける演奏であったことは否めない事実である。
前述の1986年盤など、その最たる例と言えるところであり、聴いた瞬間は名演と評価するのだが、しばらく時間が経つとどんな演奏だったのか忘却してしまうというのが正直なところ。
ワンポイント録音による画期的な高音質だけが印象に残る演奏というのが関の山と言ったところであった。
1995年盤になると、ライヴ録音ということもあり、インバルにもパッションを抑えきれず、踏み外しが随所にみられるなど、本盤に至る道程にある名演と言うことができるだろう。
そして、本盤であるが、ここにはかつての自己抑制的なインバルはいない。
インバルは、内なるパッションをすべて曝け出し、ドラマティックな表現を施しているのが素晴らしい。
それでいて、インバルならではの造型の構築力は相変わらずであり、どんなに劇的な表現を行っても、全体の造型がいささかも弛緩することがないのは、さすがの至芸と言うべきであろう。
いずれにしても、前述の「第2」及び「第3」と同様に、本盤のようなドラマティックな表現を駆使するようになったインバルを聴いていると、バーンスタインやテンシュテット、ベルティーニが鬼籍に入った今日においては、インバルこそは、現代における最高のマーラー指揮者であるとの確信を抱かずにはいられない。
オーケストラにチェコ・フィルを起用したのも功を奏しており、金管楽器、特にトランペットやホルンの卓抜した技量は、本名演のグレードをさらに上げる結果となっていることを忘れてはならない。
SACDによる極上の高音質録音も、本名演を鮮明な音質で味わえるものとして大いに歓迎したい。
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