2013年07月11日
ミュンシュ&ボストン響のベートーヴェン:交響曲第5番「運命」、ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より前奏曲、徒弟たちの踊り 他(1960 Tokyo Live)
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ミュンシュはフランス人指揮者ではあるが、出身がドイツ語圏でもあるストラスブールであったことから、フランス音楽に加えてドイツ音楽も得意としていた。
例えば、最晩年に音楽監督に就任したばかりのパリ管弦楽団とともに成し遂げたブラームスの「第1」(1968年)は、同曲演奏史上でもトップを争う名演との評価を勝ち得ているし、かつての手兵であるボストン交響楽団を指揮して演奏したメンデルスゾーンの「第4」及び「第5」(1957〜1958年)、ベートーヴェンの「第3」(1957年)及び「第5」(1955年)なども、フランス人離れした重厚さを兼ね備えた質の高い名演であった。
本盤に収められたベートーヴェンの「第5」は、前述のスタジオ録音とほぼ同時期の録音であるが、さらに素晴らしい名演と高く評価したい。
本盤におけるミュンシュは、スタジオ録音と同様に、重心の低いドイツ風の演奏を行っているのであるが、これにライヴならではの力強い生命力が付加されている。
ミュンシュは、特に十八番とする楽曲においては、スタジオ録音においても、燃焼度のきわめて高い熱い演奏を行うことが多いが、ライヴともなれば、その燃焼度は尋常ならざるレベルに達することになる。
ドイツ風の重厚さを基調としながらも、灼熱のような圧倒的な生命力に満ち溢れた畳み掛けていくような気迫と力強さは、生粋の舞台人であるミュンシュだけに可能な圧巻の至芸と言えるだろう。
確かに、音楽の内容の精神的な深みにおいてはいささか欠けている面もないとは言えないが、これだけの豪演を披露してくれれば文句は言えまい。
併録のワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」からの前奏曲等の抜粋は、前述のようなドイツ音楽を得意としたミュンシュならではの重厚さを兼ね備えた名演と高く評価したい。
メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲からのスケルツォは繊細な優美さが際立っており、ミュンシュの表現力の幅の広さを感じることが可能だ。
また、ブラックウッドの交響曲第1番は、現代音楽らしからぬ親しみやすい旋律に満ち溢れた魅力作であるが、ミュンシュの指揮も、知られざる作品を聴き手にわかりやすく聴かせようという滋味溢れる明瞭なアプローチが見事である。
ボストン交響楽団は、ミュンシュの薫陶の下、最高のパフォーマンスを発揮しているところであり、フランス風で音色がいささか軽やかになった小澤時代とは見違えるような重心の低いドイツ風の重厚な音色を出しているのが素晴らしい。
録音も、ややデッドで音場が広がらない箇所も散見されるが、1960年のものとしては十分に鮮明な音質であると評価したい。
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