2013年07月19日
ヴァント&北ドイツ放送響のブルックナー:交響曲第8番[1993年ライヴ]
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ブルックナーの交響曲を数多く演奏・録音してきたヴァントが、最も数多くの録音を遺した交響曲は、何と言っても第8番であった。
ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団との演奏(1971年)にはじまり、ヴァントによる唯一の全集を構成するケルン放送交響楽団との演奏(1979年)、先般発売されて話題を呼んだNHK交響楽団との演奏(1983年)と続くことになる。
そして、その後は、北ドイツ放送交響楽団との3度にわたる演奏(1987年ライヴ録音、1990年東京ライヴ録音、1993年ライヴ録音(本盤))、ミュンヘン・フィルとの演奏(2000年ライヴ録音)、ベルリン・フィルとの演奏(2001年ライヴ録音)の5度にわたって録音を行っており、合計で8度にわたって録音したことになるところだ。
これは、演奏・録音に際して厳格な姿勢で臨んだヴァントとしても信じ難い数多さと言えるところであるが、それだけ同曲の演奏に自信を持って臨んでいたということであり、これら遺された録音はいずれ劣らぬ素晴らしい名演であると高く評価したい。
この中で、最も優れた超名演は、ミュンヘン・フィル及びベルリン・フィルとの演奏であるというのは衆目の一致するところであろう。
もっとも、北ドイツ放送交響楽団との最後の録音となった本盤の演奏も、さすがにミュンヘン・フィル及びベルリン・フィルとの演奏のような至高の高みには達していないが、十分に素晴らしい名演と高く評価するのにいささかも躊躇するものではない。
1980年代までのヴァントによるブルックナーの交響曲の演奏におけるアプローチは、厳格なスコアリーディングの下、楽曲全体の造型を厳しく凝縮化し、その中で、特に金管楽器を無機的に陥る寸前に至るまで最強奏させるのを特徴としており、優れた演奏である反面で、スケールの若干の小ささ、そして細部にやや拘り過ぎる神経質さを感じさせるのがいささか問題であった。
そうした短所も1990年代に入って、かかる神経質さが解消し、スケールの雄大さが加わってくることによって、前述のミュンヘン・フィルやベルリン・フィルとの歴史的な超名演を成し遂げるほどの高みに達していくことになるのだが、1990年の来日時の演奏や本盤に収められた演奏は、そうした最晩年の超名演の先駆であり、高峰への確かな道程となるものとも言える。
比較的ゆったりとしたテンポをとっているが、必ずしももたれるということはなく、ゆったりとした気持ちで、同曲の魅力を満喫することができるというのは、ヴァントのブルックナーへの理解・愛着の深さの賜物と言える。
金管楽器の最強奏も相変わらずであるが、ここでは、やり過ぎということは全くなく、常に意味のある、深みのある音色が鳴っているのが素晴らしい。
音質は、従来CD盤からして比較的良好な音質であったが、その後、SHM−CD盤が発売されるに及んで、更に鮮明さを増すなど十分に満足できる高音質であり、筆者も、当該SHM−CD盤をこれまで愛聴してきた。
ところが今般、ついに待望のSACD化が行われることによって、更に見違えるような鮮明な音質に生まれ変わった。
音質の鮮明さ、音場の幅広さ、そして音圧のいずれをとっても一級品の仕上がりであり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第である。
いずれにしても、ヴァントによる至高の名演を、SACDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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