2013年08月02日
クレンペラー/モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」、第39番
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モーツァルトの交響曲第38番の名演としては、ワルター&コロンビア交響楽団(1959年)やシューリヒト&パリ・オペラ座管弦楽団(1963年)による名演、第39番の名演としては、ワルター&コロンビア交響楽団(1960年)やムラヴィンスキー&レニングラード・フィル(1965年)などによる名演がいの一番に思い浮かぶ。
これらの名演と比較すると、本盤に収められたクレンペラーによる演奏は、一部の熱心なファンを除き、必ずしもこれら両曲のベストの名演との評価がなされてきたとは言い難いと言っても過言ではあるまい。
確かに本演奏は、前述の名演が基調としていた流麗な優美さや、ムラヴィンスキーによる名演のような透徹した清澄さなどは薬にしたくもなく、むしろ武骨なまでに剛直とさえ言えるところだ。
クレンペラーは悠揚迫らぬインテンポで、一音一音を蔑ろにせず、各楽器を分厚く鳴らして、いささかも隙間風の吹かない重厚な演奏を展開している。
まさにクレンペラーは、ベートーヴェンの交響曲を指揮する時と同様のアプローチで、モーツァルトの交響曲にも接していると言えるだろう。
しかしながら、一聴すると武骨ささえ感じさせる様々なフレーズの端々から漂ってくる深沈たる情感の豊かさには抗し難い魅力があり、このような演奏の彫りの深さといった面においては、前述の名演をも凌駕しているとさえ思われるところである。
巧言令色とは程遠い本演奏の特徴を一言で言えば、噛めば噛むほど味が出てくる味わい深い演奏ということになる。
いずれにしても本演奏は、巨匠クレンペラーだけに可能な質実剛健を絵に描いたような剛毅な名演と高く評価したい。
近年では、モーツァルトの交響曲の演奏は、古楽器奏法やピリオド楽器を使用した演奏が主流となりつつあるが、そのような軽妙な演奏に慣れた耳からすると、クレンペラーによる重厚にしてシンフォニックな本演奏は実に芸術的かつ立派に聴こえるところであり、あたかも故郷に帰省した時のように安定した気持ちになる聴き手は筆者だけではあるまい。
音質は今から約50年ほど前の録音であるが、従来CD盤でも比較的満足できる音質であった。
このような中で、数年前にHQCD化されたことにより、音質は更に鮮明になるとともに音場が幅広くなったように感じられるところであり、筆者も当該HQCD盤を愛聴してきたところだ。
しかしながら、今般、ついに待望のSACD化が行われることによって大変驚いた。
従来CD盤やHQCD盤とは次元が異なる見違えるような、そして1962年のスタジオ録音とは到底信じられないような鮮明な音質に生まれ変わった。
いずれにしても、クレンペラーによる至高の名演を、SACDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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