2013年08月06日
パーヴォ・ヤルヴィ&フランクフルト放送響のブルックナー交響曲第5番
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現在、最も積極的にレコーディングに取り組んでいるパーヴォ・ヤルヴィであるが、楽曲によってオーケストラを巧みに使い分けているのが特色である。
その中でも、独墺系の作曲家による楽曲の演奏に際しては、原則としてフランクフルト放送交響楽団を起用することにしているようであり、ブルックナーの交響曲についても例外ではない。
パーヴォ・ヤルヴィ&フランクフルト放送交響楽団によるブルックナーの交響曲の演奏に関しては、既に第7番及び第9番が発売されているが、本盤に収められた第5番は第3弾となるものであり、録音は2009年であるが、久しぶりの発売と言えるものだ。
本演奏におけるパーヴォ・ヤルヴィによるアプローチは、第7番や第9番の演奏のように中庸のテンポをベースとして、楽想を精緻に、そして丁寧に描き出していくというものとは少し様相が異なっている。
何か特別な個性を発揮して、奇を衒った解釈を施すなどということがないという点においては共通しているが、むしろ、テンポはやや速めで、楽章毎のテンポの緩急を際立たせている点も特徴的であり、1990年代に入って一般化したブルックナーの交響曲の演奏様式の王道を行くオーソドックスな演奏とは異なった演奏とも言えるところだ。
もっとも、各楽器セクションのバランスの良い鳴らし方には出色のものがあり、いかなるトゥッティに差し掛かっても無機的な響きを出すということはなく、常に壮麗で懐の深い音色に満たされているのが素晴らしい。
また、緩徐楽章における旋律の数々もやや速めのテンポをとることによって、陳腐なロマンティシズムに陥ることを極力避けており、それでいて、どこをとっても格調の高さを失うことがないのが見事である。
ブルックナーの交響曲第5番のこれまでの名演としては、古くはヨッフム、そしてヴァントや朝比奈によって圧倒的な名演が成し遂げられてきており、これら大指揮者の深みのある演奏と比較して本演奏を云々するのは容易なことである。
しかしながら、必ずしもブルックナー指揮者とは言い難いパーヴォ・ヤルヴィが、重厚長大な同曲の曲想を丁寧に紐解き、これだけの見事な演奏を成し遂げたことにむしろ思いを致すべきであり、筆者としては、同曲の魅力を十二分に満喫することができるという意味において、素晴らしい名演と高く評価したい。
そして、本盤でさらに素晴らしいのは、マルチチャンネル付きのSACDによる極上の高音質録音である。
交響曲第7番や第9番でもそうであったが、パーヴォ・ヤルヴィによるアプローチが極上の高音質録音によって鮮明に再現されているのが見事であり、そうした音質の鮮明さといい、音圧の力強さといい、そして音場の拡がりといい、まさに申し分のないものである。
いずれにしても、パーヴォ・ヤルヴィ&フランクフルト放送交響楽団による素晴らしい名演を、現在望み得る最高の鮮明な高音質SACDで味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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