2013年08月13日
レヴァインのマーラー:交響曲選集
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本盤には、レヴァインが主として1970年代(第7番のみ1980年)に演奏したマーラーの交響曲のスタジオ録音が収められている。
全集ではなく、第2番及び第8番、そして「大地の歌」が存在していないのは残念な気がするが、他方、第10番についてはアダージョではなく、デリック・クック第3稿第1版による全曲版を収めており、収録曲については一長一短と言えるのかもしれない。
演奏は素晴らしく、いずれも極めて優れた名演と高く評価したい。
レヴァインのアプローチは、その大柄な体躯を思わせるような骨太で迫力満点のエネルギッシュなものだ。
奇を衒ったりすることはいささかもなく、あくまでも直球勝負。
シカゴ交響楽団やフィラデルフィア管弦楽団、そしてロンドン交響楽団などといった一流のオーケストラを巧みにドライブして、曲想を精緻かつ丁寧に、そしてダイナミックに描き出していくものである。
したがって、マーラーの交響曲の魅力をそのままの形で満喫させてくれるのが素晴らしい。
このようなオーソドックスとも言えるような純音楽的なアプローチは、近年ではジンマン、ティルソン・トーマス、マーツァルなど現代におけるマーラーの演奏様式の主流となりつつあるが、本盤の演奏当時の1970年代においては、むしろ少数派であったと言えるのではないか。
マーラーの直弟子でもあったワルターやクレンペラーによる演奏は別格として、バーンスタインによるドラマティックで劇的な演奏や、ショルティによる無慈悲なまでの強烈無比な演奏、クーベリックによるボヘミア風の素朴な味わいの演奏、カラヤンによる耽美的な絶対美を誇る演奏など、海千山千の指揮者による個性的な名演が跋扈し、アバドやマゼール、テンシュテット、インバルなどによる演奏の登場もこれからが本番という時期でもあった。
そのような個性的な演奏があまた存在している中で、敢えて純音楽的に徹した演奏を行ったレヴァインのアプローチには、ある種の新鮮さを感じるとともに、現代におけるマーラー演奏の先駆けとも言える存在ではないかとさえ考えられるところだ。
もちろん、レヴァインによるマーラーの演奏には、バーンスタインやテンシュテットなどによるドラマティックで劇的な演奏にように、我々聴き手の肺腑を打つような奥行きの深さなどは薬にもしたくないが、マーラーの交響曲の美しさ、素晴らしさを安定した気持ちで心ゆくまで満喫させてくれるという意味においては、1970年代以前に録音された演奏の中では、本盤の演奏の右に出るものはないのではないかと考えられる。
いずれにしても、本盤のマーラーの交響曲選集は、若きレヴァインによる爽快な名演であり、超廉価であることに鑑みても、安心してお薦めできる名選集であると高く評価したい。
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