2013年08月15日
清水和音のリスト:ピアノ作品集
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本盤は、リストの最高傑作の一つであるピアノ・ソナタロ短調を軸として、いくつかの有名な小品等で構成されている。
我が国を代表するピアニストである清水和音がデビュー30周年を記念(そしてリスト・イヤーを記念)して昨年1月に演奏を行ったスタジオ録音であるが、いずれの楽曲もその実力を存分に発揮した素晴らしい名演に仕上がっている。
ピアノ・ソナタロ短調は超絶的な技量と卓越した表現力を要する難曲であり、古今東西の様々な有名ピアニストがその高峰の高みに向けて登頂を挑んできた。
各ピアニストが自らの実力の威信をかけて演奏を行っているだけに、数多くの個性的な名演が目白押しであり、そのような海千山千の名演の中で存在感を発揮するのは並大抵の演奏ではかなわない。
ところが、清水和音による本演奏は、これまでの過去の名演にも必ずしも引けを取らない存在価値を十分に発揮している。
というのも、本演奏は、その超絶的な技量よりもリストの音楽そのものの美しさが伝わってくるからである。
もちろん、清水和音の技量が劣っているというわけではない。
それどころか清水和音は、超絶的な技量を持って曲想を描き出しているとさえ言えるほどであるが、清水和音は持ち前の技量を、リストの音楽をいかに美しく響かせるのかという点に奉仕させているように思えるのだ。
例えば、同曲は一つの主題が数々の変奏を繰り返していくが、その描き分けが実に巧妙になされている。
そして、変幻自在のテンポ設定や思い切った強弱、そして大胆な表情づけを駆使して、変化に富む曲想を多彩とも言うべき表現力で豊穣に描き出している。
また、強靭な打鍵にも圧倒的な力感がこもっているが、いささかも音が割れたりすることがなく、常に透明感溢れる美しい音色で満たされているのも本演奏の見事な点である。
いずれにしても、本演奏は、同曲の美しさに主眼を置いた稀有の名演として高く評価したい。
併録の巡礼の年第2年「イタリア」からの抜粋であるペトラルカのソネットやコンソレーション「慰め」も、ピアノ・ソナタと同様のアプローチによる名演である。
ここでも技量よりは楽曲の持つ美しさを際立たせているのが見事であり、こうした点にデビュー30周年を迎えた清水和音の円熟を感じることが可能であるとも言えるだろう。
そして、本盤で素晴らしいのはSACDによる極上の高音質録音である。
オクタヴィアによるピアノ録音で一般的な富山北アルプス文化センターでの録音ではないが、会場(埼玉県の三芳町文化会館)の残響を的確に生かした見事な音質に仕上がっており、清水和音の楽曲の美しさを全面に打ち出した本名演に大きく貢献しているのを忘れてはならない。
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