2013年08月22日
パーヴォ・ヤルヴィ&シンシナティ響のベルリオーズ:幻想交響曲
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ベルリオーズの幻想交響曲は、巧みなオーケストレーションや標題交響曲としてのドラマティックな展開の面白さなどから、古今東西の様々な指揮者によって、多種多様な個性的名演が繰り広げられてきた。
特に、フランス系の指揮者には必須のレパートリーであり、ミュンシュやクリュイタンス、モントゥーなどには、それぞれ複数の名演が遺されているほどだ。
また、ドイツ系の指揮者にも人気が高く、クレンペラーによる重厚な名演は今なお燦然と輝いているし、カラヤンも3度にわたって絢爛豪華な名演を成し遂げている。
鐘の音色にやや違和感があるが、ケーゲルによる心胆寒からしめるような演奏もあった。
その他にも、前衛的なブーレーズ(旧盤)による怪演、チョン・ミュンフンによる名演、2度にわたって名演を成し遂げた小澤など、名演には枚挙にいとまがない。
これだけ、数多くの指揮者による多種多様な名演が成し遂げられている理由としては、幻想交響曲にはオーケストラ演奏の醍醐味があるということになるのではないだろうか。
このような楽曲になると、パーヴォ・ヤルヴィの卓越した豊かな音楽性は、存分にその力を発揮する。
パーヴォ・ヤルヴィは、ベルリオーズの華麗なオーケストレーションを精緻に、そして丁寧に描き出して行く。
それでいて、スコアの音符の表層を取り繕った薄味の演奏には陥ることなく、どこをとっても豊かな情感に満たされているのが素晴らしい。
また、パーヴォ・ヤルヴィは、各楽章の描き分けを巧みに行うなど、演出巧者ぶりを存分に発揮しており、第1楽章及び終楽章におけるドラマティックな表現にも抜かりはないし、第4楽章の強靭さは圧倒的な迫力を誇っている。
いずれにしても、本演奏は、聴き手を驚かすような特別な個性のある演奏とは言い難いが、純音楽的なアプローチで楽曲の持つ魅力をダイレクトに表現するのに成功したという意味においては、素晴らしい名演と高く評価したい。
併録の劇的交響曲「ロミオとジュリエット」からの抜粋も、こうしたパーヴォ・ヤルヴィの演出巧者ぶりが発揮された名演であり、この演奏を聴いて、長大な同曲全曲を聴きたいと思った聴き手は筆者だけではあるまい。
そして何よりも素晴らしいのは、シンシナティ交響楽団の卓越した技量であり、管楽器も弦楽器も最高のパフォーマンスを示している。
録音も、テラークならではの極上の高音質録音であり、パーヴォ・ヤルヴィの精緻な演奏を鮮明な音質で味わうことができることを大いに喜びたい。
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