2013年08月23日
東京クヮルテットのベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集
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東京弦楽四重奏団による2度目のベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集のトリを飾る後期弦楽四重奏曲集の登場だ。
ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲集(第12〜16番)は、弾きこなすのに卓越した技量を要するとともに、その内容の精神的な深みにおいても突出した存在である。
交響曲でいえば第9番、ピアノ・ソナタでいえば第30〜32番、合唱曲で言えばミサ・ソレムニスに匹敵する奥深い内容を有した至高の名作であり、その深遠な世界を表現するには、生半可な演奏では到底かなわない。
このような高峰に聳える名作だけに、これまで様々な弦楽四重奏団によって、多種多様な名演が繰り広げられてきた。
したがって、並大抵の演奏では、海千山千の名演の中で、とてもその存在価値を発揮することは困難である。
そこで、この東京弦楽四重奏団による演奏であるが、そのアプローチは、これまでの他の弦楽四重奏曲とは何ら変わるところがない。
曲想を精緻に、そして情感豊かに描き出して行くというものだ。
したがって、聴き手を驚かすような特別な個性などは薬にしたくもなく、楽曲の本質に鋭く切り込んでいくような凄みにもやや欠けている。
しかしながら、いささかも奇を衒わない真摯な姿勢は、かつてのスメタナ四重奏団による名演奏を彷彿とさせるような、豊かな音楽性に満ち溢れた優美さを兼ね備えていると言えるのではないか。
東京弦楽四重奏団の各奏者は、世界に6セットしかないと言われているパガニーニ選定のストラディヴァリウスを使用しており、それによって醸し出される独特の美しい音色は、そうした豊かな音楽性に満ち溢れた優美さをさらに助長するものである。
また、4人の奏者による息の合った絶妙なアンサンブルも、そうした優美な演奏に一役買っていることも忘れてはならない。
いずれにしても、ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲集の演奏に何を求めるのかによって、賛否両論が生ずる演奏ではあると思うが、筆者としては、楽曲の魅力をゆったりとした気持ちが味わうことができるという意味において、素晴らしい名演と高く評価したい。
マルチチャンネル付きのSACDによる、各奏者の微妙な弓使いまで捉えた極上の高音質録音も、本盤の価値をより一層高めることに大きく貢献している点も忘れてはならない。
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