2013年08月29日
マーツァル&チェコ・フィルのブラームス:交響曲全集・大学祝典序曲・悲劇的序曲
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マーツァル&チェコ・フィルによる待望のブラームスの交響曲全集の登場だ。
このコンビは、チャイコフスキーの交響曲全集については完成にこぎつけたものの、マーラーやドヴォルザークの交響曲全集についてはいまだ一部の交響曲の録音が終了しておらず、加えて、マーツァルがチェコ・フィルの音楽監督を退任したこともあって、全集完成が見通せない状況にある。
ブラームスの交響曲全集についても、第1番、第2番及び第4番と悲劇的序曲については数年前に発売されていたが、第3番及び大学祝典序曲については長らく発売されるに至らず、前述のマーラーやドヴォルザークと同様に、全集完成について半ば諦めかけていたところだ。
それだけに、今般、第3番及び大学祝典序曲も加えて全集の形で発売されたのは、ある種の感慨を覚えるところである。
なかでも圧倒的に素晴らしい名演は第1番である。
そして、今般、初登場の第3番&大学祝典序曲も第1番と同格の名演であり、高音質録音も相俟って、それらを味わうだけでも十分に価値の高い名全集と言えるだろう。
第1番については、全体を43分で駆け抜けるという、同曲としては速めのテンポ設定であり、マーツァルは、一直線のインテンポで演奏している。
テンポだけで言うと、かのベーム&ベルリン・フィルによる超名演(1959年)と同様であるが、出てきた音楽は全く異なる。
ベームが剛毅でなおかつ重厚さが際立ったいかにもドイツ正統派の名演であったが、マーツァルの演奏は、むしろ柔和なイメージ。
剛と柔という違いがある。
では、軟弱な演奏かというとそうではない。
ブラームスの音楽の美しさを、オーケストラを無理なく鳴らすことによって、優美に仕立て上げるという、マーツァル得意の名人芸が繰り広げられているのだ。
第3番もやや速めのテンポによる演奏ではあるが、第1番と同様に剛柔のバランスが絶妙であり、マーツァルの類稀なる音楽性の高さが随所に感じられる素晴らしい名演に仕上がっていると高く評価したい。
この両曲に対して、第2番及び第4番については、マーツァルとしては今一つの出来と言わざるを得ない。
両演奏ともに美しい演奏であり、とりわけ第4番において顕著であるが、今一つ楽曲への踏み込みが足りないのではないかと考えられるところだ。
決して、凡演とは言えないが、マーツァルならば、もう一段上の彫りの深い演奏を行うことができたのではないだろうか。
チェコ・フィルは、どの楽曲の演奏においても見事な名演奏を繰り広げており、とりわけ、中欧のオーケストラならではのしっとりとした美音が、演奏全体に適度の潤いと温もりを与えている点を忘れてはならない。
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