2013年09月04日
エル=バシャのバッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻
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先ず、何よりもエル=バシャの奏でるピアノの音が実に美しい。
帯の解説によると、エル=バシャの強い希望によりべヒシュタインD−280を使用したとのことであるが、その効果は抜群であり、他の数々の名演とは一線を画するような、実に美しくも深みのある音色が演奏全体を支配している。
エル=バシャのアプローチはあくまでも正攻法であり、いささかも奇を衒うことなく、曲想を丁寧に精緻に描き出していくというものだ。
かかるアプローチは、前述のようなピアノの音との相性が抜群であり、このような点に、エル=バシャの同曲への深い拘りと理解を感じるのである。
また、エル=バシャのアプローチは正攻法で、精緻でもあるのだが、決して没個性的というわけではない。
もちろん、平均律クラヴィーア曲集の綺羅星の如く輝く過去の演奏、例えば、グールドやリヒテル、アファナシエフなどのような聴き手の度肝を抜くような特異な個性があるわけではないが、表現力は非常に幅広く、卓抜したテクニックをベースに、テンポの緩急を自在に操りつつ、強靭な打鍵から繊細な抒情に至るまで、実に内容豊かな音楽を構築している点を高く評価したい。
これまでの平均律クラヴィーア曲集の名演では、構成されたプレリュード、フーガの各曲すべてが優れた演奏ということは殆どなく、曲によっては特に優れた演奏がある一方で、いささか不満が残る演奏も混在するというのが通例であったが、エル=パシャによる本演奏では、特に優れた特記すべき演奏があるわけではないが、いずれの曲も水準以上の演奏であり、不出来な演奏がないというのが素晴らしい。
こうした演奏の特徴は、長大な同作品を、聴き手の緊張感をいささかも弛緩させることなく、一気呵成に聴かせてしまうという至芸に大きく貢献しており、ここに、エル=バシャの類稀なる音楽性と才能を大いに感じるのである。
第2巻への期待を大きく抱かせる高水準の名演と高く評価したい。
録音は、SACDによる極上の高音質録音であり、エル=バシャの美しいピアノを鮮明な音質で味わうことができる点も評価したい。
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