2013年09月12日

ラトル&ベルリン・フィルのシェーンベルク:作品集


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ラトルは若き頃より近現代の作曲家による作品を数多く採り上げてきており、シェーンベルクの管弦楽作品についてもその例外ではない。

本盤に収められたシェーンベルクによる作品(編曲を含む)も、「映画の一場面への伴奏音楽」は初めての録音になるが、その他の2曲(ブラームスのピアノ四重奏曲第1番のオーケストラ編曲バージョン及び室内交響曲第1番)については既に録音等を行った、ラトルにとっても自己薬籠中の作品であると言えるだろう。

冒頭のブラームスのピアノ四重奏曲第1番は、シェーンベルクによって編曲されたオーケストラバージョンによるものであるが、ラトルは1972年にも同曲を既に録音しており、DVD作品を除くと本演奏は2度目の録音に該当するところだ。

本演奏の特徴は、何と言ってもベルリン・フィルによる卓抜した技量を駆使した演奏の素晴らしさ、そして重厚で豊穣たる響きの美しさである。

終結部の強靭さも圧倒的な迫力を誇っており、我々聴き手の度肝を抜くのに十分である。

ラトルも、ベルリン・フィルの芸術監督就任後数年間は、プライドの高い団員の掌握にも相当に苦労し、凡演の山を築いていたが、数年前にマーラーの交響曲第9番を演奏・録音(2007年)して以降は、現代を代表する指揮者の名に相応しい名演の数々を成し遂げるようになった。

アバド時代に、カラヤン時代以前に特徴的であった重厚な音色が影をひそめ、音の重心が軽やかになっていたベルリン・フィルも、ラトルが数年の苦節を経て漸く掌握するようになってからは、再びかつての重厚さを取り戻してきたような印象を受けるところである。

本演奏においてもそれが顕著にあらわれており、まさにベルリン・フィルであるからこそ可能な豊麗な名演に仕上がっているとさえ言っても過言ではあるまい。

「映画の一場面への伴奏音楽」は、前述のようにラトルにとっては初録音となり、不協和音がさく裂する楽曲ではあるが、シェーンベルクを得意としてきたラトルならではの聴かせどころのツボを心得た見事な名演に仕上がっていると高く評価したい。

そして、本盤のトリを飾るシェーンベルクの室内交響曲第1番であるが、ラトルは同曲を原典版(15のソロ楽器による小編成によるもの)により、バーミンガム現代音楽グループとともに録音(1993年)しているが、本演奏では、シェーンベルクが同曲を作曲してから8年後にオーケストラ用に編曲したいわゆる管弦楽版によるものである。

それだけに、本演奏でもベルリン・フィルの重厚で豊穣な響きが見事にプラスに作用しており、おそらくは同曲の演奏史上でも重厚さと美しさの両方を兼ね備えた稀有の名演に仕上がっていると高く評価したい。

こうして、シェーンベルクに関わる3曲を聴いてあらためて感じたのは、ラトルとベルリン・フィルの関係がますます深まり、いよいよこのコンビの黄金時代に入ったということである。

この黄金コンビは、最近ではマーラーの交響曲第2番(2010年)など、圧倒的な名演の数々を生み出しつつあるが、今後ともラトル&ベルリン・フィルの更なる発展・飛躍を大いに期待したいところだ。

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classicalmusic at 21:52コメント(7)トラックバック(0)シェーンベルク | ラトル 

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コメント一覧

1. Posted by 中級者です(^^)   2012年06月21日 20:54
5 すばらしいブログで驚きました。まるでプロの評論家の文章を読んでいるようです。

全部自分で買っているんですか?評論家のセンセイたちはレコード会社から試聴盤が送られてくるそうですね。それに比べたら貴方の方がすごいですね。

だからぶった斬れるんですね。

期待しています!(^^)!
2. Posted by 和田   2012年06月21日 22:16
中級者です(^^)さん、コメントありがとうございます。

もちろんCDは自費で買ってます。だから本当の事が書けるのです。

音楽評論家はレコード会社と癒着しているので、凡演でも褒めたりしています。

私がこのブログで意図しているのは、読者の方々が、私のレビューを読んで、気に入りそうなのを買って、聴いてもらって、後は自らの耳を肥やしていただくことを願っているのです。

これからもご参考にしていただければ幸いです。
3. Posted by 中級者です(^^)   2012年06月22日 04:16
参考にさせていただきます。
ところで、和田さんは一日何時間くらい聴いているんですか?また、一日何時間くらい評論を書いているのでしょう?私も音楽好きですが、とてもこれほど聴きこめません。あまりの凄さに、他人事ながら心配になります。買ったディスクはどのように保管されているのでしょうか?
4. Posted by 和田   2012年06月22日 04:53
ま、私のプライベートのことはあまり触れたくありません。
とにかく、クラシック音楽が好きで好きで仕方がないということです。
買ったディスクは、大きめのCDラックを並べて保管してますよ。

中級者です(^^)さんは、この時間帯に起きていらっしゃるということは、ユーロを観戦されているのですか?

私はサッカーおたくでもあり、小さい頃から、ドイツ音楽にのめり込んでいたため、いつの間にかドイツ・ファンになってしまいました(笑)。
5. Posted by Kasshini   2014年02月20日 14:33
シェーンベルクからは、室内交響曲第1番に関して2点質問を致します。

1点目はマーラー交響曲第10番と比べて、シェーンベルク室内交響曲第1番はどちらが時代の先端を行っていたのかです。現時点では、シェーンベルク室内交響曲第1番は時代の先を言っているように私には思えてきます。なお、先日亡くなられたアバドは、ベルク「ルル」よりも、マーラー交響曲第10番の方が時代の先を行く響きと述べていますね。

2点目は理想的な演奏は何だろうかと言うことです。アンサンブルの緻密さを求めたら、とアンサンブル・アンテルコンタンポランでしょうか。私はホリガー指揮ヨーロッパ室内管弦楽団のCDを持っています。ヴィーンの響きが聴けるものだと、現在中古でしか聴けない、シェルヘン指揮ヴィーンの精鋭を集めて64年に収録したCDか、フルオケ編曲では最高と思われるラトルorギーレンか。
6. Posted by 和田   2014年02月20日 16:16
マーラーの交響曲第10番のクックなどの補筆完成版は賛否両論ありますが、シベリウスからブリテンまでを視野に入れて感動的に紡がれてゆく音楽が聴けると思います。
とは言え、マーラーの直筆によるのはご存じの通り第1楽章のみであり、どちらが時代の先端を行っていたのかは、聴く者の主観によるものと考えます。

シェーンベルクの室内交響曲第1番に関しては、小編成のアンサンブルを用いた演奏では、ブーレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン盤が知的で緻密な感覚の鋭さが光っています。
それ以外では、シノーポリ指揮ベルリン・フィル団員盤が現代的で鋭い感覚によって演奏されたシェーンベルクで、ことにベルリン・フィルの団員による緊密なアンサンブルを駆使した、精妙かつ、密度の高い表現が見事です。
7. Posted by Kasshini   2014年03月05日 13:26
あれから、シェーンベルク 室内交響曲第1番、マーラー交響曲第10番と聴きながら、白ねていました。
シェーンベルクも、クラスター音響は、和声の確信と述べていたこと、第2楽章以降の言及は、走行を知らな過ぎたため、その言及は、今となっては不適格と言えそうですね。中間楽章を中心としたシンメトリックな五楽章形式は、後年のバルトークに繋がるので興味深いですね。シェーンベルク室内交響曲第1番は、交響曲全楽章を単一楽章に凝縮すると言う点で、シベリウスに近接しますが、その点での革新性は、比較しようがないなと感じています。

今回は、個宣布都からも脱線しているであろう、楽曲に関することにお付き合いいただきありがとうございました。視野が、また広がりました。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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