2013年09月30日
ギーゼキングのラヴェル:ピアノ曲全集[SACD]
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稀代のピアニストであったワルター・ギーゼキングによる名演としては、ドビュッシーのピアノ作品集が名高い。
そして、それに優るとも劣らない名演との評価を勝ち得ているのが、同じくフランス印象派の大作曲家であるラヴェルのピアノ曲全集である。
ギーゼキングによるラヴェルのピアノ作品の本演奏は、特別な個性を発揮したり、はたまた奇を衒った解釈を施したりするということは薬にしたくもなく、緻密なスコアリーディングに基づき、曲想を精緻に、そして丁寧に描き出していくという、ある意味ではオーソドックスなアプローチに徹したものと言える。
卓越したテクニックにも出色のものがあると言えるものの、モノラル録音ということも多分にあるとは思うが、素っ気なささえ感じさせるところもあり、即物的な演奏とさえ言えるところだ。
しかしながら、一聴すると淡々と流れていく各旋律の端々には、独特の細やかなニュアンスやフランス風のエスプリ漂う豊かな情感に満ち溢れており、決して無機的な演奏には陥っていない。
そして、ギーゼキングの演奏で素晴らしいのは、1950年代の演奏であるにもかかわらず、いささかも古臭さを感じさせるということがなく、むしろ、その演奏は清新さに溢れていると言えるところであり、その気高い格調の高さにおいても卓抜としたものがあったと言えるだろう。
ラヴェルのピアノ曲を得意とするピアニストは、その後数多く誕生しているが、それらのピアニストによる数々の名演を耳にした上で、ギーゼキングによる本演奏を聴いても、録音の古さは感じても、演奏内容自体には違和感など全く感じさせず、むしろ新鮮味さえ感じさせるというのは殆ど驚異的ですらある。
本全集の演奏も、前述のようなギーゼキングによる芸風が見事にあらわれた名演と言えるところであり、まさに古くて新しい、現代においてもラヴェルのピアノ作品演奏の規範とも言うべき至高の名演と高く評価したい。
このように、ギーゼキングによるラヴェルのピアノ作品全集の演奏は、演奏自体は素晴らしいが、モノラル録音というハンディもあって、その音質は、従来CD盤では鮮明さに欠ける音質であり、時として音が歪んだり、はたまた団子のような音になるという欠点が散見されたところであった。
ところが、今般、ついに待望のSACD化が行われることによって大変驚いた。
従来CD盤とは次元が異なる見違えるような、そして1950年代前半のモノラル録音とは到底信じられないような鮮明な音質に生まれ変わった。
ギーゼキングのピアノタッチが鮮明に再現されるのは殆ど驚異的であり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第である。
いずれにしても、ギーゼキングによる至高の名演を、SACDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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