2013年10月01日
デュ・プレ&サージェントのディーリアス:チェロ協奏曲 別れの歌 夜明け前の歌
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ディーリアスのチェロ協奏曲は知る人ぞ知る名作であるが、同曲の録音は殆ど存在していない。
最近発売されたポール・ワトキンスがチェロ演奏をつとめたアンドリュー・デイヴィス&BBC交響楽団による演奏は、マルチチャンネル付きのSACDという極上の高音質も相まって、素晴らしい名演に仕上がっていたところであり、同曲の真価を広く知らしめる意味でも大変意義のある名CDであった。
もっとも、かかる名演の登場にもかかわらず、今なおその存在価値を失わないだけでなく、同曲の演奏史上最高の超名演こそは、本盤に収められたデュ・プレによる演奏である。
同曲は、英国の詩情溢れる情感豊かな作品であるが、デュ・プレの心の込め方には尋常ならざるものがある。
本演奏の数年後には多発性硬化症という不治の病を患い、2度とチェロを弾くことがかなわなくなるのであるが、デュ・プレのこのような心を込め抜いたチェロ演奏は、あたかも自らをこれから襲うことになる悲劇的な運命を予見しているかのような、何かに取り憑かれたような情念や慟哭のようなものさえ感じさせる。
もっとも、我々聴き手がそのような色眼鏡でデュ・プレのチェロを鑑賞しているという側面もあるとは思うが、いずれにしても、奥深い情感がこもった美しさの極みとも言える演奏は、涙なしには聴くことができないほどのものであり、我々聴き手の肺腑を打つのに十分である。
かかるデュ・プレの素晴らしいチェロ演奏を下支えしたサージェント&ロイヤル・フィルもイギリスの詩情に満ち溢れた素晴らしい演奏を展開していると評価したい。
併録の「告別の歌」や「夜明け前の歌」も極上の美を誇る名演であり、まさに、チェロ協奏曲ともども英国の詩情ここに極まれりと言っても過言ではあるまい。
ロイヤル・コーラル・ソサエティも最高のパフォーマンスを誇っていると評価したい。
音質は、1965年のEMIによるスタジオ録音であり、従来CD盤では今一つ冴えないものであったが、数年前にエルガーのチェロ協奏曲とのカップリングでHQCD化された(告別の歌及び夜明け前の歌はカップリングされていない)ことによって、音場が広がるとともに音質もかなり鮮明に改善されたところだ。
したがって、筆者としても、これまではHQCD盤を愛聴してきたところであるが、今般、ついに待望のSACD化が行われることによって大変驚いた。
HQCD盤などの従来盤とは次元が異なる見違えるような鮮明な音質に生まれ変わった。
デュ・プレのチェロの弓使いが鮮明に再現されるのは殆ど驚異的であり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第である。
いずれにしても、デュ・プレ、そしてサージェント&ロイヤル・フィルによる至高の超名演を、SACDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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