2013年10月02日
ワイセンベルク&カラヤンのチャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番[SACD]
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カラヤンは、今を時めくピアニストとともにチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を録音する傾向があるようだ。
リヒテル、ワイセンベルク、ベルマン、そして最晩年のキーシンの4度に渡って同曲を録音しているが、そのいずれもが、これから世に羽ばたこうとしていた偉大なピアニストばかりであるという点においては共通している。
ただ、この中で、最も低い評価しか与えられていない演奏こそは、本盤に収められているワイセンベルクとの演奏のようである。
もっとも、こうした評価は、筆者としてはこれまでの音質が今一つの通常CD盤によるものではないかと考えているところだ。
というのも、今般のSACD盤によって、桁外れの音質改善が図られたからである。
これまでの従来CD盤における本演奏の酷評の要因は、ワイセンベルクの個性が、カラヤン&パリ管弦楽団による豪壮華麗な演奏によって殆ど感じることができないとされてきたことにあるが、今般のSACD化によって、その印象が一掃されることになった意義は極めて大きいと言わざるを得ない。
もちろん、カラヤン&パリ管弦楽団の演奏は凄いものであり、今般のSACD化によってさらにその凄みを増したとさえ言える。
もっとも、ベルリン・フィルとの間で流麗なレガートを駆使して豪壮華麗な演奏の数々を成し遂げていたカラヤンにしてみれば、パリ管弦楽団との本演奏では若干の戸惑い(特に、パリ管弦楽団において)なども見られないわけではないが、そこはカラヤンの圧倒的な統率力によって、さすがにベルリン・フィルとの演奏のレベルに達しているとは言えないものの、十分に優れた名演奏を行っていると言えるところだ。
そして、ワイセンベルクのピアノ演奏は、従来CD盤やHQCD盤で聴く限りにおいては、カラヤン&パリ管弦楽団の中の一つの楽器と化していたと言えるところであり、その意味では、カラヤン&パリ管弦楽団による豪壮華麗な演奏の最も忠実な奉仕者であったとさえ言える。
しかしながら、今般のSACD化により、ワイセンベルクの強靭にして繊細なピアノタッチが、オーケストラと見事に分離して聴こえることになったことによって、実はワイセンベルクが、カラヤン&パリ管弦楽団の忠実な僕ではなく、むしろ十二分にその個性を発揮していることが判明した意義は極めて大きいと言わざるを得ない。
いずれにしても、筆者としては、同曲のベストワンの演奏と評価するのにはいささか躊躇せざるを得ないが、全盛期のカラヤン、カラヤンに必死に喰らいついていこうとするパリ管弦楽団、そしてワイセンベルクによる演奏の凄さ、素晴らしさ、そして美しさを十二分に味わうことが可能な素晴らしい名演として高く評価したい。
音質は、1970年のスタジオ録音であり、前述のように従来CD盤では今一つ冴えない音質であったが、数年前に発売されたHQCD盤は、若干ではあるが音質が鮮明になるとともに、音場が幅広くなったところである。
しかしながら、今般、ついに待望のSACD化が行われることによって、見違えるような鮮明な音質に生まれ変わった。
音質の鮮明さ、音場の幅広さ、そして音圧のいずれをとっても一級品の仕上がりであり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第である。
とりわけ、前述のように、ワイセンベルクのピアノ演奏とカラヤン&パリ管弦楽団の演奏が明瞭に分離して聴こえるのは殆ど驚異的ですらある。
いずれにしても、カラヤン&パリ管弦楽団、そしてワイセンベルクによる素晴らしい名演を、SACDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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