2013年10月04日
カラヤン&ベルリン・フィルのシューベルトの交響曲第8番「未完成」/ハイドンの交響曲第104番「ロンドン」
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本盤には、シューベルトの交響曲第8番「未完成」とハイドンの交響曲第104番「ロンドン」が収められている。
先ずは、シューベルトの交響曲第8番「未完成」であるが、広範なレパートリーを誇ったカラヤンとしても、シューベルトは必ずしも得意とはしていなかった。
カラヤン自身は、シューベルトをむしろ好んでおり、若き頃より理想の演奏を行うべく尽力したようであるが、難渋を繰り返し、特に、交響曲第9番「ザ・グレイト」に関してはフルトヴェングラーに任せるなどとの発言を行ったということもまことしやかに伝えられている。
しかしながら、それほどまでにカラヤンのシューベルトの演奏は出来が悪いのであろうか。
本盤に収められたシューベルトの交響曲第8番「未完成」は、カラヤンによる唯一のシューベルトの交響曲全集からの抜粋である。
そして、カラヤンは同曲をその後一度も録音しなかった。
実際には、カラヤンによる最後の録音となったブルックナーの交響曲第7番(1989年)に併せて同曲も録音する予定であったとのことであるが、それを果たすことなく鬼籍に入ってしまった。
したがって、本演奏は、カラヤンによる同曲の究極の演奏と言っても過言ではあるまい。
そして、その演奏内容は、他の指揮者による名演とは一味もふた味も異なる演奏に仕上がっている。
本演奏に存在しているのは、徹頭徹尾、流麗なレガートが施されたいわゆるカラヤンサウンドに彩られた絶対美の世界であると言えるだろう。
シューベルトの交響曲は、音符の数が極めて少ないだけに、特にこのようないわゆるカラヤンサウンドが際立つことになるのかもしれない。
したがって、シューベルトらしさと言った観点からすれば、その範疇からは大きく外れた演奏とは言えるが、同曲が持つ音楽の美しさを極限にまで表現し得たという意味においては、全盛期のカラヤンだけに可能な名演と言えるのではないかと考えられる。
また、同曲の心眼に鋭く切り込んでいくような奥の深さとは無縁の演奏ではあるが、これだけの究極の美を表現してくれたカラヤンの演奏に対しては文句を言えまい。
なお、カラヤンはベルリン・フィルとともに、同曲を1964年に録音しているが、本演奏のような美の世界への追及の徹底度がやや弱いきらいがあり、筆者としては本演奏の方をより上位に掲げたい(カラヤンを好まない聴き手には、これらの旧盤の方がより好ましい演奏に聴こえることも十分に考えられるところである)。
いずれにしても、本演奏は、全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルが醸成した究極の美の世界、そしてカラヤン流の美学が具現化された究極の絶対美の世界を堪能することが可能な極上の美を誇る名演と高く評価したい。
一方、ハイドンの交響曲第104番「ロンドン」は、カラヤンが得意中の得意としていた楽曲だ。
スタジオ録音だけでも、ウィーン・フィルとの演奏(1959年)、そして本盤のベルリン・フィルとの演奏(1975年)、さらには、ベルリン・フィルとの「ロンドンセット」の一環として録音だれた演奏(1980年)の3種を数えるところだ。
これにザルツブルク音楽祭でのウィーン・フィルとの演奏(アンダンテ)なども含めると、現時点で4種もの録音が存在している。
いずれ劣らぬ演奏であるが、筆者としては、オーケストラの音色からしてウィーン・フィルとのスタジオ録音を随一の名演として掲げたいと考えている。
もっとも、本盤の演奏も、全盛時代のカラヤン&ベルリン・フィルの凄さを感じさせるものとしては、ウィーン・フィルとの演奏に肉薄する極めて優れた名演と高く評価したい。
近年流行の古楽器奏法やピリオド楽器を使用した演奏とは大きく異なり、重厚でシンフォニックな演奏ではあるが、同曲の魅力を安定した気持ちで味わうことができるという意味においては、現代においても十二分に通用する名演奏と言えるのではないだろうか。
このような名演を聴いていると、近年において、ハイドンの交響曲の人気が今一つであるというのも、演奏のせいではないかと思われてならないところだ。
音質は、従来CD盤でも比較的満足できる音質であり、数年前にリマスタリングも施されるとともに、HQCD化もなされたことによって、音質は更に鮮明になるとともに音場が幅広くなったように感じられるところであり、筆者も当該リマスタリングCD盤やHQCD盤を愛聴してきたところだ。
しかしながら、今般、ついに待望のSACD化が行われることによって大変驚いた。
リマスタリングCD盤やHQCD盤とは次元が異なる見違えるような鮮明な音質に生まれ変わった。
いずれにしても、カラヤン、そしてベルリン・フィルによる素晴らしい名演を、SACDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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