2013年10月28日

マイスキーのドヴォルザーク&エルガー:チェロ協奏曲


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本盤には現代を代表するチェリストであるマイスキーによる2大チェロ協奏曲の演奏が収められているが、いずれも素晴らしい名演と高く評価したい。

マイスキーのチェロは、超絶的な技量はさることながら、いかなる難所に差し掛かってもいわゆる技巧臭がすることはなく、常にヒューマニティ溢れる温かさを失う点がないのが素晴らしい。

そして、どこをとっても情感の豊かさが支配しており、各フレーズを心を込めて歌い抜いているのであるが、徒に感傷的に陥ったり、はたまた陳腐なロマンティシズムに陥ったりすることなく、常に格調の高さを失っていない点を高く評価したい。

ドヴォルザークのチェロ協奏曲については、マイスキーは2度にわたってスタジオ録音を行っている。

それはバーンスタイン&イスラエル・フィルと組んだ本演奏(1988年)とメータ&ベルリン・フィルと組んだ演奏(2002年)であるが、マイスキーの個性が全開の演奏は、明らかに2002年盤である。

したがって、マイスキーのチェロ演奏の醍醐味を味わうのであれば、私は2002年盤の方を躊躇せずに推薦する。

しかしながら、本演奏には2002年盤にはない独特の味わいがあると言えるのではないだろうか。

それには、バックをつとめたバーンスタインによる名演奏が大きい。

バーンスタインは、かつてニューヨーク・フィルの音楽監督の時代には、いかにもヤンキー気質の爽快な演奏の数々を成し遂げていたが、ヨーロッパに拠点を移した後、とりわけ1980年代に入ってからは、テンポは異常に遅くなるとともに、濃厚でなおかつ大仰な演奏をするようになった。

このような芸風に何故に変貌したのかはよくわからないところであるが、かかる芸風に適合する楽曲とそうでない楽曲があり、とてつもない名演を成し遂げるかと思えば、とても一流指揮者による演奏とは思えないような凡演も数多く生み出されることになってしまったところだ。

具体的には、マーラーの交響曲・歌曲やシューマンの交響曲・協奏曲などにおいては比類のない名演を成し遂げる反面、その他の作曲家による楽曲については、疑問符を付けざるを得ないような演奏が目白押しであったように思われる。

本盤の演奏では、そうした芸風が幸いにもプラスに働いている。

同じドヴォルザークの交響曲第9番では、とても大指揮者による演奏とは思えないような凡演(というか醜悪な演奏)に堕していただけに、ある意味では奇跡的な名演奏とも言えるのであろう。

本演奏でもバーンスタインはゆったりとしたテンポによって曲想を濃密に描き出して行くが、情感豊かで格調の高いマイスキーのチェロ演奏との相乗効果によって、同曲演奏史上でも最もヒューマニティ溢れる濃厚な味わいに満ちた名演に仕上がっていると評価したい。

他方、エルガーのチェロ協奏曲についても、マイスキーは2度録音しているが、本盤はマイスキーにとっての最初の録音(1990年)である。

同曲については、デュ・プレが数々の超名演を遺していることから、他のチェリストの中には録音を逡巡する者もいるところだ(例えばロストロポーヴィチなど)。

マイスキーによる本演奏も、さすがにデュ・プレほどの渾身の生命力を備えているとは言い難いが、かつてのフルニエによる名演(1966年)に存在した気品と、デュ・プレによる各種の超名演にも存在した奥深い情感の豊かさを併せ持った名演に仕上がっていると言えるのではないだろうか。

バックは、シノーポリ&フィルハーモニア管弦楽団であるが、ここでのシノーポリはいつもの楽曲の細部に至るまで彫琢の限りを尽くした分析的なアプローチを控えて、むしろマイスキーのチェロの引き立て役に徹しているのが功を奏している。

音質は従来CD盤でも十分に満足できる高音質であったが、今般のSHM−CD化によって、マイスキーのチェロの弓使いがより鮮明に再現されるとともに、音場が幅広くなったように思われる。

いずれにしても、マイスキーによる素晴らしい名演を、SHM−CDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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