2013年10月30日
インバル&都響のマーラー:交響曲第2番「復活」
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インバルは、東京都交響楽団との間でマーラーチクルスを続行しているが、前作の第3番に続いて本盤も、この黄金コンビの好調さを表す素晴らしい名演だ。
インバルは、かつてフランクフルト放送交響楽団と素晴らしい全集を作り上げた。
当該全集では、インバルは劇的な要素をできるだけ抑制し、客観的な視点でマーラーがスコアに記した音符の数々を無理なく鳴らすというアプローチであった。
インバル自身には、マーラーへの深い愛着に去来する有り余るパッションがあるのだが、インバルは演奏の際には、それをできるだけ抑制しようとする。
それ故に、客観的なアプローチを取りつつも、いささかも無味乾燥な演奏に陥ることなく、内容の濃さにおいては人後に落ちることはない。
しかも、抑制し切れずに零れ落ちてくるパッションの爆発が随所に聴かれ、それが聴き手の感動をより深いものにするのだ。
ここに、インバルによるマーラーの魅力の秘密がある。
東京都交響楽団との新チクルスにおけるアプローチも、基本的には旧全集と同様であるが、旧全集と比較すると、パッションの爆発の抑制を相当程度緩和しており(ライヴ録音とスタジオ録音の違いもあるとは思うが)、これが新チクルスをして、旧全集よりもより一層感動的な名演に仕立てあげているのだと考える。
かかる点は、近年のインバルの円熟ぶりを示す証左として高く評価したい。
第1楽章は、冒頭のゆったりとしたテンポによる低弦による合奏の間の取り方が実に効果的。
トゥッティに至る高揚は雄渾なスケールで、その後の高弦による旋律の歌い方は、思い入れたっぷりの情感に満ち溢れていて美しい。
続く主部は、緩急自在の思い切ったテンポ設定、幅の広いダイナミックレンジを駆使して、実にドラマティックに曲想を抉り出していく。
随所に聴かれる金管楽器の最強奏や雷鳴のようなティンパニは、圧巻の凄まじいド迫力だ。
かつての自己抑制的なインバルとは段違いの円熟のインバルならではの成せる業だ。
第2楽章は、オーソドックスな解釈であるが、弦楽器も木管楽器もこれ以上は求め得ないような情感の籠った流麗な音楽を紡ぎ出している。
第3楽章は、冒頭のティンパニによる強打の効果的な間の取り方が、第1楽章冒頭の低弦と同様で実に巧み。
その後も、ティンパニを始めとした打楽器群の生かした方は素晴らしく、打楽器を重要視したマーラーの本質を見事に衝いている。
中間部の金管楽器のファンファーレにおける猛烈なアッチェレランドは凄まじい迫力であるし、その後に続く弱音のトランペットのパッセージのゆったりしたテンポによる歌わせ方は、まさに天国的な至高・至純の美しさ。
終結部のトゥッティのド迫力は、もはや言葉を失ってしまうほど圧倒的だ。
第4楽章は、メゾソプラノのフェルミリオンの歌唱が実に美しい。
それに合わせるかのように、東京都交響楽団も雰囲気満点の実に美しい音楽を奏でている。
終楽章は、冒頭圧巻の迫力で開始される。
その後は、ゲネラルパウゼや思い切った強弱の変化等を効果的に駆使しつつ主部に繋いでいく。
主部への導入部のティンパニは凄まじい迫力、主部は風格豊かな堂々たる進軍だ。
この部分は、下手な指揮者にかかると冗長さを感じさせてしまうのだが、インバルの場合は、緩急自在のテンポ設定、アッチェレランドの効果的活用、強弱の変化など、あらゆる至芸を駆使して実に濃密でドラマティックな音楽を構築しているのが素晴らしい。
合唱が導入されて以降は、スケール雄大な壮麗さが支配しており、圧倒的な高揚と迫力のうちに、全曲を締めくくっている。
独唱陣は、終楽章においても見事な歌唱を披露しており、二期会合唱団も大健闘と言える。
何よりも素晴らしいのは東京都交響楽団であり、インバルの見事な統率の下、最高のパフォーマンスを示している。
SACDによる極上の高音質録音も、本盤の価値を高めるのに大きく貢献しているのを忘れてはならない。
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