2022年08月26日
プレトニョフ&ロシア・ナショナル管のチャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」/イタリア奇想曲
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プレトニョフによる新しいチャイコフスキーの交響曲チクルスの第3弾であり、最高傑作である交響曲第6番「悲愴」。
前回の全集から2度目の全集に至るまでの間、プレトニョフは、ベートーヴェンの交響曲全集やピアノ協奏曲全集で、自由奔放とも言えるような実に個性的な演奏を繰り広げてきた。
交響曲全集については賛否両論あるようであるが、ピアノ協奏曲全集については、現代を代表する名演との評価を幅広く勝ち得ている状況にある。
いずれにしても、今般の2度目の全集は、そうしたクラシック音楽の王道とも言えるベートーヴェンなどの演奏を経験した上での、満を持して臨む演奏ということであり、既に発売された交響曲第4番や第5番も、プレトニョフの円熟が感じられる素晴らしい名演に仕上がっていたところだ。
プレトニョフによるチャイコフスキーの演奏は、前回の全集でもそうであったが、ベートーヴェンの交響曲全集における自由奔放さとは別人のようなオーソドックスな演奏を披露していた。
ロシアの民族色をやたら強調したあくの強い演奏や表情過多になることを極力避け、純音楽的なアプローチに徹しているようにさえ思えるほどだ。
本盤の「悲愴」の演奏においてもかかるアプローチは健在であり、プレトニョフは中庸のテンポにより曲想を精緻に、そして丁寧に描き出して行くという、ある意味ではオーソドックスとも言うべき王道たる演奏を心掛けているとも言える。
スコアに忠実に従った各楽器の編成の下、各楽器セクションのバランスを重視した精緻な響きが全体を支配しており、他の指揮者による演奏ではなかなか聴き取ることが困難な音型を聴くことが可能なのも、プレトニョフの演奏ならではの特徴とも言える。
もっとも、純音楽的かつ精緻で、オーソドックスなアプローチと言っても、第1楽章冒頭のゆったりとしたテンポによる序奏の後、主部に入ってから速めに進行させ、第2主題の導入部で再度ゆったりしたテンポをとったりするなど、あたかも魔法のような変幻自在のテンポ設定は実に巧妙である。
また、第1楽章(特に展開部終結部の雷鳴のようなティンパニは凄まじいド迫力だ)及び第3楽章における畳み掛けていくような気迫、強靭な生命力には凄みがあり、我々聴き手の度肝を抜くのに十分な迫力を誇っている。
終楽章の心を込め抜いた慟哭の表現も壮絶の極みであり、全体としていい意味での硬軟バランスのとれた円熟の名演に仕上がっていると高く評価したい。
本盤の登場によって、プレトニョフ&ロシア・ナショナル管弦楽団による新しいチャイコフスキーの交響曲チクルスの後期3大交響曲集が出揃ったことになるが、残る初期の交響曲集(第1〜3番)及びマンフレッド交響曲についても、素晴らしい円熟の名演を大いに期待したいところだ。
併録のイタリア奇想曲は、楽曲の細部に至るまで彫琢の限りを尽くした精緻さとドラマティックな要素を兼ね備えたプレトニョフならではの稀有の名演と高く評価したい。
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