2013年12月02日
ジュリーニ&フィルハーモニア管のブルックナー:交響曲第7番/ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」/ムソルグスキー:歌劇「ホヴァンシチナ」前奏曲
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レコード芸術誌で、イギリスの批評家グレアム・ケイ氏が
「今月わたしはBBCレジェンズ・レーベルのある新譜に目を奪われました。1982年ロイヤル・アルバート・ホールで行われたBBCプロムスのコンサートをライヴ収録したうちの一つ、ジュリーニ指揮フィルハーモニア管の演奏するブルックナー交響曲第7番です。これぞまさしく、わたしが絶対に入手しなければならない一枚だったからです。...(中略)...このブルックナーの交響曲第7番には、ロイヤル・アルバート・ホールのたっぷりとした音響と、聴衆の手放しの熱狂、金管の2,3のミスが忠実に再現されています。しかし重要なことは、霊感の翼に乗って飛翔しているジュリーニを聴くことができる点にあるのです。」
と賛意を呈するジュリーニのブルックナーの第7番。
さらに文中でグレアム・ケイ氏は、グラモフォン誌に掲載されたデリック・クック(マーラー10番補筆完成で有名)による以下のような評も引用していた。
「ジュリーニにはブルックナーの美徳のすべてがある。気品、ゆったりとした雄大さ、リズムのパンチ、感傷抜きの雄弁さ、そしてとりわけあの名状しがたい“精神性”」
このブルックナーは、1982年7月19日のステレオ・ライヴ録音で、音質は非常に良好。
遅めのテンポを基調に陶酔的なまでの旋律美を追求したジュリーニの様式に、ブルックナーの作品中でも飛びぬけた「美旋律の宝庫」というべき第7交響曲は、まさにうってつけのレパートリーだったのあろう。
耽美的なまでの“美”はいたるところに存在するが、やはり絶品は絶世絶美のアダージョ。
この美しくも哀しい情感に身も心もゆだねてしまったかのようなアダージョの美的音響は、他に例を思い浮かべることができない。
確かにウィーン・フィルを振ったDG盤(1986年)も名演だったが、カンタービレ表現に独自の様式を持つウィーン・フィルとは異なり、当盤は高性能ながらクセの少ないフィルハーモニア管弦楽団が相手だけに、ジュリーニの中空に雄大な弧を描くかのような旋律形成が100%生かされたものと思われる。
また、フィルハーモニア管弦楽団の明るい音色が、この美的世界に明朗なカラーを付与していることも事実で、これらすべての要素が実演ならではの熱をしだいに帯びて、ついに爛熟のきわみといいたい大音響に結実するあたりは、もう筆舌に尽くし難い。
ジュリーニ晩年の旋律耽溺とも言うべき解釈が、明るい日差しを受けて壮麗に開花した唯美的ブルックナーと言えるだろう。
余白に、40代だったジュリーニによるファリャ《三角帽子》からの2つの舞曲(1963年)と、ムソルグスキー《ホヴァンシチナ》前奏曲(1961年)を収録している。
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