2013年12月21日
クーベリック&ベルリン・フィルのドヴォルザーク:交響曲第8番&第9番《新世界より》
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クーベリックは、ドヴォルザークの交響曲、とりわけ「第8」及び「第9」については何度も録音しているが、その中でも最も優れた演奏は、本盤に収められたベルリン・フィル盤であると考える。
「第8」については、その後、バイエルン放送交響楽団とともにライヴ録音(1976年)、「第9」については、バイエルン放送交響楽団(1980年)、次いでチェコ・フィル(1991年)とともにライヴ録音しているが、バイエルン放送交響楽団との演奏は、いずれも演奏自体は優れた名演に値するものであるが、ノイズの除去のために低音域を絞ったオルフェオレーベルの音質が演奏のグレードを著しく貶めていることになっており、筆者としてはあまり採りたくない。
「第9」のチェコ・フィル盤は、ビロード革命後のチェコへの復帰コンサートの歴史的な記録であり、演奏全体に熱気は感じられるが、統率力にはいささか綻びが見られるのは否めない事実である。
こうした点からすれば、クーベリックによるドヴォルザークの「第8」及び「第9」の決定盤は、本盤に収められた演奏ということになる。
それどころか、他の指揮者による名演と比較しても、トップの座を争う名演と高く評価し得るのではないだろうか。
このうち「第8」は、1966年と録音年がいささか古いが、それだけにベルリン・フィルが完全にカラヤン色に染まっていない時期の録音であり、チェコの大自然を彷彿とさせるような情感の豊かさや瑞々しさが演奏全体に漲っているのが特徴だ。
テンポなども随所で変化させており、トゥッティに向けて畳み掛けていくような気迫が漲っているが、音楽の自然な流れをいささかも損なっていないのが素晴らしい。
本盤の4年後に、セル&クリーヴランド管弦楽団による同曲最高の超名演(1970年)が生まれているが、本演奏はそれに肉薄する超名演と高く評価したい。
これに対して、「第9」は1972年の録音で、ベルリン・フィルがほぼカラヤン色に染まった時期の録音だ。
それだけに、全体的にはチェコ風の民族色がやや薄まり、より華麗で明瞭な音色が支配しているように感じるが、それでも情感の豊かさにおいてはいささかの不足もなく、「第9」の様々な名演の中でもトップの座を争う名演であることには変わりはない。
ただ、名演としての評価は揺るぎがないものの、クーベリックらしさと言う意味においては、「第8」と比較するとややその個性が弱まっていると言えるところであり、このあたりは好き嫌いが分かれるのかもしれない。
ベルリン・フィルも、両演奏ともにクーベリックの指揮の下、素晴らしい演奏を繰り広げており、各管楽器奏者の卓越した技量には惚れ惚れするほどだ。
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コメント一覧
1. Posted by 小島晶二 2022年10月22日 21:11

2. Posted by 和田 2022年10月22日 21:54
クーベリックの残された録音は、おおむね穏健な演奏ではありますが、これはオーケストラがベルリン・フィルということもあってか、凄まじい熱気と集中力に溢れています。しかも、オーケストラの音色も大変瑞々しく、表情も実に雄弁です。当時クーベリックがどんな精神状態にあったか不明ですが、ちょっとミュンシュ最晩年の幻想交響曲のような突然変異なところがあります。クーベリックの熱心な聴き手を自負しているとはいえ、あまり大それたことは言えませんが、ともかくこの演奏は凄いと思います。おそらく、クーベリックの正規録音の中では屈指のものではないでしょうか。