2012年05月16日

マタチッチ&N響のブラームス:交響曲第1番/ベートーヴェン:交響曲第7番(SACD)


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ブラームスの交響曲第1番は、NHK交響楽団にとっては得意のレパートリーとも言うべき楽曲である。

最近でこそ、デュトワやアシュケナージなどを音楽監督に迎え、フランス系やロシア系の音楽も十八番にしつつあるNHK交響楽団であるが、本盤の録音当時は、名誉指揮者であるサヴァリッシュやスウィトナー、ホルスト・シュタインなどのドイツ系の指揮者が幅を利かせ、ドイツ系の音楽を中心に演奏していた。

さらに前の時代のカイルベルトやシュヒターなども含め、ブラームスの交響曲第1番は、それこそ自己薬籠中の楽曲と言っても過言ではなかったと考えられる。

実際に、サヴァリッシュなどによる同曲のCDも発売されているが、本マタチッチ盤はそもそも次元が異なる名演と高く評価したい。

テンポは全体で約42分という、ブラームスの交響曲第1番としては速めのテンポであるが、音楽全体のスケールは極めて雄大である。

マタチッチは、必ずしもインテンポには固執せずに、随所でテンポを変化させており、特に終楽章のアルペンホルンが登場する直前など、いささか芝居がかったような大見得を切る表現なども散見されるが、音楽全体の造型がいささかも弛緩しないのは、巨匠ならではの圧巻の至芸と言える。

NHK交響楽団も力の限りを振り絞って力奏しており、その圧倒的な生命力は切れば血が飛び出てくるほどの凄まじさだ。

当時は、力量はあっても事なかれ主義的な演奏をすることが多いと揶揄されていたNHK交響楽団であるが、本演奏では、こうした力強い生命力といい、畳み掛けていくような集中力といい、実力以上のものを出し切っているような印象さえ受ける。

したがって、NHK交響楽団の渾身の演奏ぶりを褒めるべきであるが、それ以上に、NHK交響楽団にこれだけの鬼気迫る演奏をさせた最晩年の巨匠マタチッチのカリスマ性を高く評価すべきである。

いずれにしても、本盤のブラームスの交響曲第1番は、NHK交響楽団の同曲演奏史上においても、特筆すべき至高の名演と高く評価したい。

ベートーヴェンの交響曲第7番は、今から25年以上も前のことであるが、NHK教育テレビにおいて、本盤に収められたマタチッチ&NHK交響楽団によるベートーヴェンの交響曲第7番を放送していたのを視聴した時のことを鮮明に記憶している。

それは、マタチッチがほとんど指揮をしていなかったということだ。

手の動きはきわめて慎ましやかであり、実際にはアイコンタクトだけで指揮していたと言えるのではないだろうか。

しかしながら、そうした殆ど動きがないマタチッチを指揮台に頂きながら、NHK交響楽団がそれこそ渾身の力を振り絞って力強い演奏を行っていたのがきわめて印象的であった。

当時のNHK交響楽団は、技量においては、我が国のオーケストラの中でトップと位置づけられていたが、演奏に熱がこもっていないとか、事なかれ主義の演奏をするとの批判が数多く寄せられており、死ぬ直前の老匠とは凄い演奏をするなどと揶揄されていた。

そうした批評の是非はさておき、死を1年後に控えていた最晩年のマタチッチによるこのような豪演に鑑みれば、そのような批評もあながち否定できないのではないかと考えられる。

いずれにしても、あのような手の動きを省略したきわめて慎ましやかな指揮で、NHK交響楽団に生命力溢れる壮絶な演奏をさせたマタチッチの巨匠性やカリスマ性を高く評価すべきである。

本盤には、そうした巨匠マタチッチと、その圧倒的なオーラの下で、渾身の演奏を繰り広げたNHK交響楽団による至高の超名演が収められている。

そして、今般のSACD化によって、Blu-spec-CD盤やXRCD盤を凌駕する素晴らしい音質に蘇った。

マタチッチ&NHK交響楽団による歴史的な超名演をSACDによる極上の高音質で味わうことができるのを大いに喜びたい。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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